風邪をひいた時の喉の痒みは、喉の粘膜の乾燥が大きな原因の一つです。空気が乾燥しやすい冬場や、エアコンの効いた室内では、特に喉が乾燥しやすく、痒みやイガイガ感が悪化しがちです。喉の乾燥を防ぎ、痒みを和らげるための対策をいくつかご紹介します。まず、最も基本的なのは、こまめな水分補給です。喉の粘膜を潤し、乾燥を防ぐためには、常に水分を摂ることが大切です。温かい飲み物(白湯、ハーブティー、生姜湯、薄いお茶など)は、喉を温め、粘膜を潤す効果があります。冷たい飲み物は、かえって喉を刺激することがあるため、常温か温かいものを選びましょう。はちみつも、保湿効果や抗菌作用があり、喉の炎症を和らげるのに役立ちます(ただし、1歳未満の乳児には与えないでください)。次に、室内の湿度を適切に保つことです。加湿器を使用したり、濡れタオルを部屋に干したり、洗濯物を室内に干したりして、湿度を50~60%程度に保つように心がけましょう。特に、就寝中は口呼吸になりやすく喉が乾燥しやすいため、寝室の加湿は重要です。マスクの着用も、喉の乾燥を防ぐのに非常に有効です。マスクの内側の湿度が保たれるため、自分の呼気に含まれる水分で喉が潤います。また、外部からのホコリや冷たい空気、ウイルスなどの刺激からも喉を守ってくれます。外出時だけでなく、就寝時にもマスクを着用するのも良いでしょう。うがいも、喉を潤し、清潔に保つのに役立ちます。水やぬるま湯、あるいは刺激の少ないうがい薬で、こまめにうがいをしましょう。のど飴やトローチを舐めるのも、唾液の分泌を促し、喉を潤す効果があります。ただし、糖分の摂りすぎには注意が必要です。また、タバコの煙は、喉の粘膜を乾燥させ、刺激するため、禁煙はもちろんのこと、受動喫煙も避けるようにしましょう。アルコールの摂取も、利尿作用があり脱水を招きやすく、また喉を乾燥させるため控えましょう。これらの乾燥対策を実践することで、風邪の時のつらい喉の痒みを和らげ、回復を早めることが期待できます。

腰痛になったら何科へ?症状別の正しい診療科選び

ある日突然、ぎっくり腰で動けなくなった。あるいは、長年、慢性的な腰の痛みに悩まされている。多くの日本人が経験する国民病ともいえる「腰痛」ですが、いざ病院へ行こうと思った時、「この痛みは、一体何科で診てもらえばいいのだろう?」と迷ってしまう方は少なくありません。腰痛の原因は非常に多岐にわたるため、自己判断で間違った診療科を選んでしまうと、診断までに時間がかかったり、適切な治療が受けられなかったりすることもあります。まず、腰痛で最も多くの人が最初に受診すべき診療科は「整形外科」です。整形外科は、骨、関節、筋肉、神経といった、体を支え、動かすための「運動器」全般の病気を専門とします。腰痛の主な原因である、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、あるいは骨折や筋肉の炎症など、骨や神経に起因するほとんどの腰痛は、整形外科の領域です。レントゲンやMRIといった画像検査を用いて、痛みの原因を正確に診断し、薬物療法、リハビリテーション、ブロック注射、そして必要であれば手術といった、幅広い治療法を提供してくれます。しかし、腰痛の原因は、整形外科領域の疾患だけとは限りません。例えば、尿路結石や腎盂腎炎といった泌尿器の病気や、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系の病気が、腰痛として感じられることもあります。この場合は、それぞれ「泌尿器科」や「婦人科」が専門となります。また、非常に稀ですが、大動脈瘤や、すい臓がん、大腸がんといった、内臓の重篤な病気が腰に痛みを引き起こすこともあります。安静にしていても痛みが全く軽くならない、夜間に痛みが強くなる、体重減少などの全身症状を伴う、といった場合は、「内科」や「消化器内科」で一度診てもらうことも重要です。どこに行けばよいか全く見当がつかない場合は、まずはかかりつけの内科医や、総合診療科で相談し、症状を詳しく伝えた上で、適切な専門科を紹介してもらうのが、最も確実で安心な方法と言えるでしょう。

ぎっくり腰から慢性痛まで。整形外科で見る腰痛の原因

腰痛を訴えて「整形外科」を受診した際、医師は問診や診察、画像検査などを通じて、その痛みがどこから来ているのか、原因を突き止めていきます。整形外科で扱われる腰痛の原因は実に様々で、急性のものから慢性のものまで、多岐にわたります。最も代表的なのが、突然の激痛で動けなくなる「急性腰痛症」、いわゆる「ぎっくり腰」です。重いものを持ち上げたり、急に体をひねったりした際に、腰の筋肉や靭帯、関節(椎間関節)に微細な損傷や炎症が生じることで起こります。レントゲンでは異常が見られないことがほとんどで、主に痛み止めや湿布、コルセットなどで安静を保ち、炎症が治まるのを待ちます。次に、慢性的な腰痛や、足のしびれを伴う場合に疑われるのが、神経の圧迫による疾患です。その代表格が「腰椎椎間板ヘルニア」です。背骨のクッションの役割をしている椎間板の中身(髄核)が、外に飛び出してしまい、近くを走る神経を圧迫することで、腰痛だけでなく、お尻から足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)を引き起こします。特に、前かがみの姿勢で症状が悪化するのが特徴です。一方、高齢者に多く見られるのが「腰部脊柱管狭窄症」です。これは、加齢によって、背骨の中の神経の通り道である「脊柱管」が狭くなり、中の神経が圧迫される病気です。少し歩くと足がしびれて歩けなくなり、少し前かがみになって休むと、また歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が、典型的な症状です。また、腰椎(腰の骨)が前後にずれてしまう「腰椎すべり症」や、骨がもろくなる骨粗しょう症が原因で、しらないうちに背骨が潰れてしまう「圧迫骨折」も、高齢者の腰痛の重要な原因となります。これらは、主にレントゲンやMRI検査によって診断が確定します。これらの病気以外にも、長年の負担によって背骨が変形する「変形性腰椎症」や、筋肉の疲労が蓄積した「筋筋膜性腰痛」など、整形外科が扱う腰痛の原因は多岐にわたります。まずは専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩です。

その腰痛、内臓の病気かも?見逃してはいけない危険なサイン

多くの腰痛は、筋肉や骨、神経といった運動器の問題によって引き起こされますが、中には、内臓の病気が原因で腰に痛みが生じているケースも存在します。これらは「内臓体性反射」と呼ばれ、内臓の痛みの信号が、同じ神経レベルにある腰の皮膚や筋肉にも伝わることで、腰痛として感じられるのです。単なる腰痛だと思って放置していると、原因となっている病気が進行してしまう危険性があるため、その特徴的なサインを知っておくことは非常に重要です。整形外科的な腰痛との大きな違いは、「姿勢や動きによって痛みが変化しない」ことです。筋肉や骨が原因の腰痛は、前かがみになったり、体をひねったりすると痛みが強くなり、楽な姿勢をとれば痛みが和らぐのが一般的です。しかし、内臓由来の腰痛は、どんな姿勢をとっても、安静にしていても、痛みの強さがほとんど変わりません。むしろ、夜間、寝ている時に痛みが強くなることもあります。では、どのような内臓の病気が腰痛を引き起こすのでしょうか。まず、「泌尿器科系」の病気です。腎臓に石ができる「尿路結石」は、石が尿管に詰まると、脇腹から腰にかけて、転げ回るほどの激痛を引き起こします。腎臓に細菌が感染する「腎盂腎炎」も、高熱と共に、片側の腰を叩くと響くような痛みが特徴です。次に、「婦人科系」の病気です。子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣の病気などが、骨盤内の神経を圧迫したり、炎症を起こしたりして、腰全体に重く、鈍い痛みを引き起こすことがあります。月経周期と連動して痛みが強くなる場合は、特に注意が必要です。また、消化器系の病気、例えば「すい炎」や「すい臓がん」は、背中から腰にかけての持続的な痛みを起こすことがあります。さらに、見逃してはならないのが、「大動脈瘤」です。腹部の大動脈にできたこぶが破裂、あるいは破裂しそうになると、腰に引き裂かれるような激痛が生じることがあります。これは命に関わる緊急事態です。これらの内臓疾患が疑われるサイン、つまり「安静にしていても痛い」「夜間に痛みが強くなる」「発熱や吐き気、血尿、体重減少などの全身症状を伴う」といった特徴が見られる場合は、整形外科だけでなく、まずは「内科」や「総合診療科」を受診し、全身的な視点から原因を探ることが、重篤な病気の見逃しを防ぐ上で何よりも大切です。