患者目線での医療サービス・選び方のガイド

2025年7月
  • 痛みの再発を防ぐための生活習慣改善

    生活

    つらいかかとの痛みが、ストレッチや治療によってようやく和らいできた時、多くの人が「もう大丈夫」と安心してしまうかもしれません。しかし、足底腱膜炎などの踵の痛みは、その原因となった生活習慣を改めない限り、再発しやすいという特徴があります。痛みがなくなった後こそ、再発を防ぐための根本的な対策を始める絶好の機会です。二度とあの痛みを繰り返さないために、今日から見直すべき生活習慣のポイントをご紹介します。まず、最も重要な要素の一つが「体重の管理」です。私たちの足の裏は、歩行時には体重の約1.2倍、ランニング時には約3倍もの負荷を受け止めています。体重が数キログラム増えるだけでも、足底腱膜にかかる負担は飛躍的に増大します。もし、体重が標準よりもオーバーしている場合は、バランスの取れた食事と適度な運動によって、無理のない範囲で減量に取り組むことが、最も効果的な再発予防策となります。次に、「長時間の立ちっぱなし・歩きっぱなしを避ける」工夫です。仕事などで、どうしても長時間立ち続けなければならない場合は、時々座って休憩したり、足踏みをしたりして、同じ場所に負荷がかかり続けないようにしましょう。また、コンクリートのような硬い地面の上での作業が多い方は、衝撃を吸収してくれるクッション性の高いマットを足元に敷くといった工夫も有効です。そして、「運動習慣の見直し」も欠かせません。運動不足はふくらはぎの筋肉を硬くし、再発のリスクを高めます。日頃からウォーキングなどを取り入れ、足全体の柔軟性を保ちましょう。一方で、ランニングなどのスポーツをする方は、準備運動とクールダウンを徹底することが重要です。運動前には必ずふくらはぎや足裏のストレッチを行い、運動後にも同様のストレッチと、必要であればアイシングを行って、足底腱膜のケアを怠らないようにしましょう。急に運動の強度や距離を上げるのも禁物です。自分の体の声を聞きながら、段階的に負荷を上げていくことが大切です。これらの地道な生活習慣の改善は、かかとの健康を守るだけでなく、全身の健康維持にも繋がる、未来への投資なのです。

  • 突発性発疹の登園許可は必要?医師と保育園の判断基準

    生活

    子供が突発性発疹にかかった時、保護者が気になることの一つに「保育園への登園には、お医者さんの登園許可書が必要なのだろうか?」という点があります。インフルエンザや水疱瘡など、法律で出席停止期間が定められている感染症とは異なり、突発性発疹の扱いは少し異なります。まず、法的な観点から見ると、突発性発疹は「学校保健安全法」において、必ず出席停止にしなければならない「第一種・第二種感染症」には分類されていません。「その他の感染症」という扱いで、「医師において感染のおそれがないと認めるまで」が出席停止の基準とされていますが、その判断は比較的柔軟です。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」でも、突発性発疹は「登園のめやす」として、「解熱後、機嫌が良く、全身状態が良いこと」と示されており、医師の意見書の提出は必須とはされていません。つまり、基本的には「医師の許可書は不要」と考えてよいでしょう。では、医師はどのような基準で「登園可能」と判断するのでしょうか。医師が最も重視するのは、発疹の状態ではなく、子供の全身状態です。具体的には、「完全に熱が下がっているか(解熱後24時間以上経過しているのが望ましい)」「機嫌は良いか、普段通りの活気があるか」「ミルクや食事、水分を十分に摂取できているか」という三つのポイントです。これらの条件を満たしていれば、たとえ体に発疹が残っていても、医学的には集団生活に戻って問題ないと判断されます。しかし、最終的な判断を下すのは、子供を預かる保育園側です。園によっては、集団感染のリスク管理や、他の保護者への配慮から、独自のルールを設けている場合があります。「念のため、解熱後2日経ってから登園してください」といった決まりがある園や、「医師の診断書は不要ですが、口頭で登園可能かどうかの確認を受けてきてください」とお願いされることもあります。したがって、最も確実な方法は、まず保育園に連絡し、その園のルールを確認することです。その上で、小児科を受診した際に、「保育園にはいつから登園できますか?」と医師に直接確認し、その指示に従うのが、最もスムーズでトラブルのない対応と言えるでしょう。

  • 危険なめまいのサイン。脳の病気が隠れている可能性

    医療

    ぐるぐる回る回転性めまいの多くは、耳の病気が原因であり、命に別状はありません。しかし、ごく稀に、そのめまいの背後に、脳梗塞や脳出血といった、一刻を争う「脳の病気」が隠れていることがあります。これらの「危険なめまい」を見分けるためのサインを知っておくことは、自分や大切な人の命を守る上で極めて重要です。耳が原因のめまいと、脳が原因のめまいとを区別する最も重要なポイントは、「めまい以外の神経症状を伴っているかどうか」です。脳の中でも、体のバランスを司る「小脳」や「脳幹」といった部分に障害が起こると、めまいが発生します。これらの部位は、体の動きや感覚をコントロールする重要な神経が集まっている場所でもあるため、ここに異常が生じると、めまいと共に、様々な神経症状が同時に現れるのです。以下のサインが一つでも見られた場合は、ただのめまいではない可能性を考え、ためらわずに救急車を呼ぶか、脳神経外科や神経内科のある救急病院を直ちに受診してください。激しい頭痛: 「後頭部をバットで殴られたような」と表現されるような、突然の激しい頭痛を伴うめまいは、くも膜下出血などのサインです。ろれつが回らない・言葉が出にくい: 明らかに話し方がおかしい、思ったように言葉が出てこない。手足のしびれ・麻痺: 片方の手足に力が入らない、感覚が鈍い、しびれる。物が二重に見える(複視): 視点が合わず、物が二つに見える。顔面の麻痺: 顔の半分が歪む、口の片側から水がこぼれる。まっすぐ歩けない: 立とうとしてもバランスが取れず、一方向へ倒れてしまう。これらの症状は、脳の血管が詰まったり、破れたりしていることを示す危険な兆候です。特に、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクがある方は、注意が必要です。これに対して、耳が原因のめまいの場合は、吐き気や嘔吐はあっても、上記のような神経症状を伴うことはありません。難聴や耳鳴りといった「耳の症状」を伴うことはあっても、ろれつが回らなくなったり、手足がしびれたりすることはないのです。めまいの症状を冷静に観察し、これらの危険なサインがないかを確認すること。それが、命を救うための第一歩となります。

  • 突発性発疹になったら保育園はいつから行ける?

    生活

    ある日突然、赤ちゃんが39度以上の高熱を出した。他に咳や鼻水といった症状はないのに、高熱だけが3〜4日続く。心配で小児科に連れて行っても「突発性発疹かもしれませんね」と言われ、解熱剤を処方されるだけ。そして、熱がすっと下がったかと思うと、今度はお腹や背中を中心に、赤いブツブツとした発疹が現れる。これが、多くの赤ちゃんが経験する「突発性発疹」の典型的な経過です。この病気、特に共働きの家庭にとって大きな悩みとなるのが、「いつから保育園に登園させてよいのか」という問題です。結論から言うと、突発性発疹の登園の目安は、「解熱し、機嫌が良く、普段通りに食事がとれるようになってから」となります。厚生労働省が定める「保育所における感染症対策ガイドライン」においても、突発性発疹は、医師による登園許可書(治癒証明書)が必須の感染症には分類されていません。登園を再開するにあたって最も重要な判断基準は、発疹の有無ではなく、赤ちゃんの全身状態です。熱が完全に下がり、平熱で24時間以上経過していることが第一の条件です。そして、高熱で体力を消耗し、不機嫌だった状態から回復し、いつものように元気に遊び、ミルクや離乳食を普段通りに摂取できるようになれば、登園は可能と判断されます。発疹は、熱が下がった後に出てくる病気の「治癒のサイン」のようなものです。この発疹自体には感染力はなく、かゆみや痛みを伴うこともほとんどありません。数日で自然に消えていくため、発疹が残っていること自体は、登園を妨げる理由にはならないのです。ただし、保育園によっては、独自のルールを設けている場合もあります。例えば、「解熱後24時間以上経過していること」を条件としている園や、念のため医師の診察を受けて口頭での許可を確認してほしい、とお願いされるケースもあります。そのため、自己判断で登園させる前に、必ず一度、通っている保育園に連絡し、登園再開の基準について確認しておくことが、スムーズな復帰のための大切なステップとなります。

  • 突発性発疹と間違いやすい病気。登園前に再確認を

    医療

    高熱の後に発疹が出た場合、その多くは突発性発疹ですが、中には似たような症状を示す、他の注意すべき病気の可能性もゼロではありません。特に、保育園への登園を再開する前には、本当に突発性発疹で間違いないか、他の感染症ではないかという点を、念のため確認しておくことが大切です。突発性発疹と症状が似ていて、鑑別が必要となる代表的な病気に「麻疹(はしか)」があります。麻疹も、高熱と発疹を主症状としますが、その経過は突発性発疹とは大きく異なります。麻疹の場合、高熱と共に、咳、鼻水、目やにといった、風邪のような症状(カタル症状)が強く現れるのが特徴です。そして、熱が一旦少し下がりかけた頃に、口の中に「コプリック斑」という、白い粘膜疹が現れます。その後、再び高熱になると同時に、耳の後ろあたりから発疹が出始め、それが顔、体、手足へと広がっていきます。発疹は、突発性発疹の淡いピンク色のものとは異なり、赤く、次第に融合して大きな斑点状になるのが特徴です。麻疹は非常に感染力が強く、重篤な合併症を引き起こすこともあるため、学校保健安全法で厳格な出席停止期間が定められています。もし、高熱と発疹に加えて、ひどい咳や鼻水、目やにがある場合は、麻疹の可能性も考慮し、必ず医療機関を受診し、診断を確定させる必要があります。また、「風疹(三日ばしか)」も、発熱と発疹を伴いますが、熱は比較的軽度であることが多く、発熱と同時に発疹が現れるのが特徴です。耳の後ろのリンパ節の腫れもよく見られます。その他にも、アデノウイルスやエンテロウイルスなど、様々なウイルスが発熱と発疹を引き起こすことがあります。薬によるアレルギー反応(薬疹)で、発熱と発疹が出ることもあります。これらの病気は、それぞれ感染力や対処法、登園の基準が異なります。最終的な診断は、医師でなければ下せません。「熱が下がった後に発疹が出たから、きっと突発性発疹だろう」と自己判断する前に、一度小児科医の診察を受け、「他の感染症の可能性はなく、集団生活に戻って問題ない」という専門家のお墨付きをもらっておくことが、子供自身にとっても、保育園の他のお友達にとっても、最も安全で安心な選択と言えるでしょう。

  • 子供の突然の首の痛み。熱がない時にまず行くべき診療科

    医療

    ある朝、子供が「首が痛くて動かせない」と泣きながら起きてきた。熱はなく、元気そうに見えるのに、首だけが特定の方向に傾いたまま固まってしまっている。このような状況に直面した時、親としては非常に驚き、どう対処すればよいのか、そして何科の病院へ連れて行けばよいのか、判断に迷うことでしょう。結論から言うと、熱がなく、突然の首の痛みや傾きを訴えている場合に、まず受診すべき診療科は「整形外科」です。この症状で最も考えられる原因は、「環軸関節回旋位固定(かんじくかんせつかいせんいこてい)」、通称「寝違え様症状」や「小児の仮性斜頸」と呼ばれる状態です。これは、首の骨(頸椎)の一番目と二番目の骨(環椎と軸椎)の関節が、軽度の炎症や、不自然な姿勢で寝ていたことなどが原因で、亜脱臼のような状態になり、首が回旋した位置でロックされてしまうものです。風邪の後などに、喉の炎症が首の関節に波及して起こることもあります。整形外科では、問診で症状が始まった経緯を聞き、首の動きの範囲を確認します。そして、診断を確定させるために、首のレントゲン(X線)検査や、場合によってはCT検査を行います。これらの画像検査によって、骨の位置関係に異常がないか、あるいは骨折や他の深刻な病気が隠れていないかを確認することができます。もし、整形外科の受診が難しい場合や、かかりつけ医がいる場合は、まずは「小児科」で相談するのも一つの方法です。小児科医は、子供の全身状態を評価し、整形外科的な問題が強く疑われれば、適切な専門医へ紹介してくれます。ここで大切なのは、親が自己判断で首を無理に動かしたり、マッサージをしたりしないことです。不適切な対応は、症状を悪化させる可能性があります。熱がないからと油断せず、子供が首の痛みを訴えたら、まずは骨と関節の専門家である整形外科を受診すること。それが、的確な診断と、子供を痛みから早く解放してあげるための、最も確実な第一歩となります。

  • 我が子の突発性発疹。保育園復帰までの道のり

    生活

    先週の火曜日、保育園から「お子さんが39度の熱を出しています」と一本の電話が入りました。慌てて迎えに行くと、ぐったりしてはいるものの、咳や鼻水はなく、ただひたすらに熱が高い。それが、我が家の息子(1歳2ヶ月)と突発性発疹との戦いの始まりでした。その日から、息子の体温計は39度台と40度台を行ったり来たり。小児科では「突発性発疹の可能性が高いですね」と言われ、解熱剤の座薬を処方されたものの、薬が切れるとまた熱が上がります。食欲もなく、大好きなバナナも一口しか食べません。ただ、水分だけはなんとか麦茶を飲んでくれたのが救いでした。そんな高熱が、丸三日間続きました。そして、金曜日の朝。ふと息子の体に触れると、熱っぽさがすっと引いていることに気づきました。熱を測ると37度前半。ようやく長いトンネルを抜けた、と心から安堵したのも束の間、今度はお腹と背中に、細かい赤い発疹がびっしりと現れていたのです。「これか!」と、医師の言葉を思い出しました。熱が下がったことで、息子の機嫌は少しずつ回復。離乳食も半分くらいは食べてくれるようになりました。そこで頭をよぎったのが「保育園はいつから行けるだろう?」という、仕事との兼ね合いです。すぐに保育園に電話で確認すると、「熱が完全に下がって、普段通り元気で、ご飯も食べられるようでしたら、発疹が残っていても大丈夫ですよ。先生からも許可をもらってくださいね」とのことでした。土日を挟んで様子を見ることにし、週末は息子の体力の回復に専念しました。月曜日の朝、熱は完全に平熱。発疹はまだ残っていましたが、息子はいつものように元気に家中をハイハイし、朝ごはんも完食しました。その足でかかりつけの小児科へ行き、診察してもらいました。先生は息子の全身状態を確認し、「もうすっかり元気ですね。発疹はしばらく残るけど、感染力はないから、今日から保育園に行っても大丈夫ですよ」と、笑顔で太鼓判を押してくれました。その言葉を聞いて、ようやく一安心。長い一週間でしたが、子供の回復力と、病気の正しい知識を持つことの大切さを改めて感じた出来事でした。

  • 高熱と痛みが強烈。ヘルペス性口内炎(歯肉口内炎)とは

    医療

    口内炎と発熱を伴う病気の中でも、特に症状が激しく、子供やその親を苦しめるのが「ヘルペス性口内炎」です。正式には「ヘルペス性歯肉口内炎」と呼ばれ、その名の通り、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に初めて感染した時(初感染)に発症することが多い、非常に特徴的な病気です。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると、体の神経節に生涯にわたって潜伏し続けるという性質を持っています。多くの大人は、知らないうちに感染して抗体を持っているため、再活性化しても口唇ヘルペス(唇の周りにできる水ぶくれ)のような軽い症状で済みます。しかし、まだ免疫を持っていない乳幼児が初めてこのウイルスに感染すると、体は激しい拒絶反応を示し、重い全身症状を引き起こすのです。ヘルペス性口内炎は、突然、39度以上の高熱で発症します。そして、最も特徴的なのが、口の中の症状です。まず、歯茎(歯肉)が真っ赤に腫れ上がり、簡単に出血するようになります。よだれが異常に増え、強い口臭を伴うこともあります。それに続いて、舌や頬の内側、唇の裏側など、口の中のあらゆる場所に、多数の小さな水疱が出現します。この水疱はすぐに破れて、アフタ性口内炎のような白い潰瘍となり、融合して大きなびらん面を作ることもあります。これらの口内炎は、極めて痛みが強く、子供は食事や水分を摂ることが全くできなくなり、不機嫌でぐずり続けます。あまりの痛みに、夜も眠れなくなるほどです。高熱と激しい口の痛みで、脱水症状に陥りやすく、入院して点滴治療が必要になるケースも少なくありません。診断がつけば、抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビルなど)が処方されます。この薬は、ウイルスの増殖を抑える効果があり、早期に服用を開始することで、症状の重症化を防ぎ、回復を早めることが期待できます。子供が経験したことのないような高熱と、歯茎からの出血を伴うひどい口内炎に気づいたら、ヘルペス性口内炎を強く疑い、一刻も早く小児科や耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

  • かかとの痛みは何科へ行くべきか?

    医療

    足の裏やかかとに痛みを感じ始めた時、多くの人が「この痛みは病院へ行くべきなのだろうか」「もし行くなら、何科を受診すればいいのか」と迷うことでしょう。湿布を貼って様子を見るべきか、それとも専門家に診てもらうべきか。その最初の判断が、早期回復への鍵を握っています。結論から言うと、足の裏やかかとの痛みが数日経っても改善しない、あるいは悪化する傾向にある場合は、迷わず「整形外科」を受診することをお勧めします。整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、腱といった、体を動かすための器官「運動器」の疾患を専門とする診療科です。足底腱膜炎をはじめとする、かかとの痛みの原因のほとんどは、この運動器のトラブルに起因するため、整形外科がまさに専門領域となります。整形外科では、まず医師による丁寧な問診と診察が行われます。いつから、どのような時に痛むのか(特に朝の一歩目の痛みの有無)、どのような仕事やスポーツをしているのか、といった情報が診断の重要な手がかりとなります。その後、医師が直接かかとや足の裏を押して、痛みの場所(圧痛点)を正確に特定します。診断を確定させ、また他の病気の可能性を除外するために、「レントゲン(X線)検査」が行われるのが一般的です。レントゲン検査では、足底腱膜炎に特徴的な、かかとの骨のトゲ「骨棘(こつきょく)」の有無を確認することができます。ただし、骨棘があっても痛くない人もいれば、骨棘がなくても痛い人もいるため、骨棘の有無が痛みの直接の原因とは限りません。近年では、より詳しく腱膜の状態を調べるために、「超音波(エコー)検査」が行われることも増えています。エコー検査では、足底腱膜が炎症によって厚くなっていないか、微細な断裂がないかをリアルタイムで画像として確認でき、診断の精度を大きく高めることができます。自己判断で痛みを長引かせるよりも、まずは整形外科で専門的な診断を受け、自分の足に何が起きているのかを正確に把握すること。それが、つらい痛みから解放されるための、最も確実な近道です。

  • ヘバーデン結節は女性に多い?ホルモンとの関係

    医療

    ヘバーデン結節の患者さんには、一つの明確な特徴があります。それは、圧倒的に「女性」に多いということです。一般的に、男性よりも女性の方が数倍発症しやすく、特に40代以降、更年期を迎える世代の女性に多発します。この事実は、ヘバーデン結節の発症に、女性ホルモンである「エストロゲン」が深く関わっていることを強く示唆しています。エストロゲンは、月経や妊娠、出産といった女性特有の機能に関わるだけでなく、骨や血管、皮膚、そして関節の健康を維持するためにも非常に重要な役割を担っています。エストロゲンには、関節の軟骨を保護したり、関節を包む滑膜の炎症を抑えたりする働きがあると考えられています。しかし、女性は40代半ば頃から閉経に向けて、卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減少していきます。この「エストロゲンのゆらぎ」や「急激な減少」が、関節を保護するバリアを弱め、ヘバーデン結節の発症の引き金になるのではないか、というのが、近年最も有力視されている説です。これまで、ヘバーデン結節は、単に指の使いすぎや加齢による「老化現象」の一つとして片付けられがちでした。しかし、同じように指を使っていても、男性には少なく、女性の特定の年代に集中して発症するという事実を説明するには、それだけでは不十分でした。女性ホルモンという視点が加わったことで、この病態の理解は大きく進んだのです。このホルモンとの関連性は、治療へのアプローチにも新たな可能性をもたらしています。例えば、エストロゲンと似た構造と働きを持つ「大豆イソフラボン」を食事から積極的に摂取することや、大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されて作られる「エクオール」という成分をサプリメントで補うことが、症状の緩和に有効である可能性が期待され、研究が進められています。実際に、エクオールを摂取することで、指の痛みが和らいだという報告も出てきています。もちろん、ヘバーデン結節の原因はホルモンだけでなく、遺伝的な要因や、指を酷使する生活習慣など、複数の要素が複雑に絡み合っています。しかし、「女性ホルモンの減少」という大きな要因を理解することは、病気と向き合う女性たちにとって、セルフケアのヒントや、新たな治療への希望に繋がるかもしれません。