ぐるぐる回るめまいで耳鼻咽喉科を受診した際、医師はどのような検査を行って、その原因を探っていくのでしょうか。めまいの検査は、患者さんにとっては少し特殊で、戸惑うものもあるかもしれませんが、その一つ一つが、耳の奥にある小さな平衡器官の異常を捉えるための、重要な手がかりとなります。その流れを知っておくことで、安心して検査に臨むことができます。まず、最も基本となるのが「問診」です。いつ、どんな状況で、どのくらいの時間、どのくらい激しいめまいが起きたか。めまいと同時に、難聴や耳鳴りはなかったか。過去に同じような経験はあるか。こうした情報が、診断の方向性を決める上で非常に重要になります。次に、めまいの診断に不可欠なのが「眼振(がんしん)検査」です。眼振とは、めまいが起きている時に、本人の意思とは関係なく、眼球が小刻みに揺れ動く現象のことです。この眼の動きを観察することで、平衡機能に異常があるかどうか、そして異常が耳(末梢性)にあるのか、脳(中枢性)にあるのかを判断することができます。医師は、患者さんの眼の動きを直接観察したり、「フレンツェル眼鏡」という、ピントが合わない特殊な拡大鏡を使って、微細な眼振を捉えたりします。さらに、赤外線CCDカメラを使って、暗闇の中での眼の動きを記録し、より客観的に評価することもあります。この眼振検査の一環として、特定の頭の動きでめまいが誘発されるかを調べる「頭位眼振検査」や「頭位変換眼振検査」が行われます。これは、ベッドに寝た状態で、頭を様々な方向に動かしたり、勢いよく頭の位置を変えたりする検査で、特に良性発作性頭位めまい症(BPPV)の診断には欠かせません。めまいが誘発されるため、少しつらい検査ですが、原因を特定するためには非常に重要です。また、めまいの原因がメニエール病など、聴覚に関わるものである可能性を探るために、「聴力検査」も必ず行われます。片方の耳だけに聴力低下がないかなどを調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、医師はめまいの原因を診断し、それぞれの病態に合わせた最適な治療方針を立てていくのです。