子供が突発性発疹と診断されると、保護者は「一体、どこでうつってきたのだろう?」と疑問に思うかもしれません。また、集団生活を送っている場合は、他の子供たちへの影響も気になるところです。病気の感染環を理解するためには、その「潜伏期間」と「感染経路」についての正しい知識が不可欠です。まず、突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)または7型(HHV-7)が体内に入ってから、実際に症状が現れるまでの期間、すなわち「潜伏期間」は、約10日間とされています。比較的長いのが特徴です。つまり、今日熱が出た場合、その10日ほど前に、どこかでウイルスに接触した可能性が高い、ということになります。次に、「感染経路」ですが、主な感染源は、ウイルスに感染している人の「唾液」です。ウイルスは唾液中に排出されるため、感染者の咳やくしゃみなどの飛沫(しぶき)を吸い込んだり、ウイルスが付着した手やおもちゃなどを口に入れたりすることで感染します(飛沫感染・接触感染)。しかし、突発性発疹の場合、最も一般的な感染源は、実は「家族(特に両親)」であると考えられています。ヒトヘルペスウイルス6型や7型は、ほとんどの人が子供の頃に知らないうちにかかっており(不顕性感染)、その後は体内にウイルスが潜伏し続けています。そして、健康な大人の唾液中にも、このウイルスが断続的に排出されていることが分かっているのです。つまり、両親が赤ちゃんに話しかけたり、キスをしたり、食べ物を分け与えたりといった、ごく日常的な愛情表現の中で、気づかないうちにウイルスを赤ちゃんにうつしているケースが非常に多いのです。これは、誰のせいでもなく、防ぎようのない、ごく自然な感染プロセスと言えます。生後6ヶ月頃になると、母親からもらった抗体が徐々に失われ、赤ちゃん自身の免疫でウイルスと戦わなければならなくなります。このタイミングで、家族からウイルスをもらい、初めての「発熱」という形で症状が現れるのが、突発性発疹なのです。保育園などで他の子供からうつる可能性ももちろんありますが、多くの場合、最も身近な大人から感染しているということを知っておくと、過度に感染源探しをしたり、他者を責めたりすることなく、冷静に病気と向き合うことができるでしょう。