手足口病の急性期の症状が治まり、発疹が消えてようやく一安心、と思った矢先に、子どもの手足の皮がボロボロとむけ始めることがあります。これは「落屑(らくせつ)」と呼ばれる現象で、特に症状が強かった部分の皮膚が、新しい皮膚に生まれ変わる過程で起こる、ごく自然な治癒のプロセスです。見た目は少し痛々しく、保護者としては心配になるかもしれませんが、これは病気が快方に向かっている証拠であり、過度に心配する必要はありません。しかし、この皮がむけている時期の肌は非常にデリケートな状態です。新しい皮膚はまだ薄く、外部からの刺激に弱いため、お風呂でのケアには少し注意が必要です。まず、最も大切なのは「無理に皮を剥がさない」ことです。気になってついめくってしまいたくなるかもしれませんが、自然に剥がれ落ちるのを待つのが基本です。無理に剥がすと、まだ準備ができていない下の皮膚を傷つけてしまい、そこから細菌が侵入して感染症を起こす原因になりかねません。お風呂に入る際も、この原則は同じです。体を洗う時は、石鹸をよく泡立て、ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦るのは絶対にやめてください。手のひらや柔らかい綿のタオルで、優しく撫でるように洗うだけで十分です。皮がふやけて剥がれかかっている部分も、そっとしておきましょう。お湯の温度は熱すぎず、ぬるめに設定します。長湯をすると皮膚がふやけすぎて、かえって刺激になることがあるため、短時間で済ませるのが賢明です。お風呂から上がった後は、水分を拭き取る際にも注意が必要です。タオルで擦るのではなく、優しく押さえるようにして水分を吸い取ります。そして、この時期に非常に重要になるのが「保湿」です。皮がむけた後の新しい皮膚は乾燥しやすいため、入浴後すぐに、低刺激性の保湿剤(ワセリンやヘパリン類似物質、セラミド配合のクリームなど)をたっぷりと塗ってあげましょう。肌のバリア機能をサポートし、健やかな皮膚の再生を促します。この丁寧な保湿ケアを続けることで、肌はよりスムーズに、そして綺麗に生まれ変わっていきます。落屑は治癒過程の一環と捉え、焦らず、優しく見守ってあげることが大切です。