ある朝、子供が「首が痛くて動かせない」と泣きながら起きてきた。熱はなく、元気そうに見えるのに、首だけが特定の方向に傾いたまま固まってしまっている。このような状況に直面した時、親としては非常に驚き、どう対処すればよいのか、そして何科の病院へ連れて行けばよいのか、判断に迷うことでしょう。結論から言うと、熱がなく、突然の首の痛みや傾きを訴えている場合に、まず受診すべき診療科は「整形外科」です。この症状で最も考えられる原因は、「環軸関節回旋位固定(かんじくかんせつかいせんいこてい)」、通称「寝違え様症状」や「小児の仮性斜頸」と呼ばれる状態です。これは、首の骨(頸椎)の一番目と二番目の骨(環椎と軸椎)の関節が、軽度の炎症や、不自然な姿勢で寝ていたことなどが原因で、亜脱臼のような状態になり、首が回旋した位置でロックされてしまうものです。風邪の後などに、喉の炎症が首の関節に波及して起こることもあります。整形外科では、問診で症状が始まった経緯を聞き、首の動きの範囲を確認します。そして、診断を確定させるために、首のレントゲン(X線)検査や、場合によってはCT検査を行います。これらの画像検査によって、骨の位置関係に異常がないか、あるいは骨折や他の深刻な病気が隠れていないかを確認することができます。もし、整形外科の受診が難しい場合や、かかりつけ医がいる場合は、まずは「小児科」で相談するのも一つの方法です。小児科医は、子供の全身状態を評価し、整形外科的な問題が強く疑われれば、適切な専門医へ紹介してくれます。ここで大切なのは、親が自己判断で首を無理に動かしたり、マッサージをしたりしないことです。不適切な対応は、症状を悪化させる可能性があります。熱がないからと油断せず、子供が首の痛みを訴えたら、まずは骨と関節の専門家である整形外科を受診すること。それが、的確な診断と、子供を痛みから早く解放してあげるための、最も確実な第一歩となります。