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手足口病の後に肌がむける!お風呂でのケアは?
手足口病の急性期の症状が治まり、発疹が消えてようやく一安心、と思った矢先に、子どもの手足の皮がボロボロとむけ始めることがあります。これは「落屑(らくせつ)」と呼ばれる現象で、特に症状が強かった部分の皮膚が、新しい皮膚に生まれ変わる過程で起こる、ごく自然な治癒のプロセスです。見た目は少し痛々しく、保護者としては心配になるかもしれませんが、これは病気が快方に向かっている証拠であり、過度に心配する必要はありません。しかし、この皮がむけている時期の肌は非常にデリケートな状態です。新しい皮膚はまだ薄く、外部からの刺激に弱いため、お風呂でのケアには少し注意が必要です。まず、最も大切なのは「無理に皮を剥がさない」ことです。気になってついめくってしまいたくなるかもしれませんが、自然に剥がれ落ちるのを待つのが基本です。無理に剥がすと、まだ準備ができていない下の皮膚を傷つけてしまい、そこから細菌が侵入して感染症を起こす原因になりかねません。お風呂に入る際も、この原則は同じです。体を洗う時は、石鹸をよく泡立て、ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦るのは絶対にやめてください。手のひらや柔らかい綿のタオルで、優しく撫でるように洗うだけで十分です。皮がふやけて剥がれかかっている部分も、そっとしておきましょう。お湯の温度は熱すぎず、ぬるめに設定します。長湯をすると皮膚がふやけすぎて、かえって刺激になることがあるため、短時間で済ませるのが賢明です。お風呂から上がった後は、水分を拭き取る際にも注意が必要です。タオルで擦るのではなく、優しく押さえるようにして水分を吸い取ります。そして、この時期に非常に重要になるのが「保湿」です。皮がむけた後の新しい皮膚は乾燥しやすいため、入浴後すぐに、低刺激性の保湿剤(ワセリンやヘパリン類似物質、セラミド配合のクリームなど)をたっぷりと塗ってあげましょう。肌のバリア機能をサポートし、健やかな皮膚の再生を促します。この丁寧な保湿ケアを続けることで、肌はよりスムーズに、そして綺麗に生まれ変わっていきます。落屑は治癒過程の一環と捉え、焦らず、優しく見守ってあげることが大切です。
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知っておきたい。突発性発疹の潜伏期間と感染経路
子供が突発性発疹と診断されると、保護者は「一体、どこでうつってきたのだろう?」と疑問に思うかもしれません。また、集団生活を送っている場合は、他の子供たちへの影響も気になるところです。病気の感染環を理解するためには、その「潜伏期間」と「感染経路」についての正しい知識が不可欠です。まず、突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)または7型(HHV-7)が体内に入ってから、実際に症状が現れるまでの期間、すなわち「潜伏期間」は、約10日間とされています。比較的長いのが特徴です。つまり、今日熱が出た場合、その10日ほど前に、どこかでウイルスに接触した可能性が高い、ということになります。次に、「感染経路」ですが、主な感染源は、ウイルスに感染している人の「唾液」です。ウイルスは唾液中に排出されるため、感染者の咳やくしゃみなどの飛沫(しぶき)を吸い込んだり、ウイルスが付着した手やおもちゃなどを口に入れたりすることで感染します(飛沫感染・接触感染)。しかし、突発性発疹の場合、最も一般的な感染源は、実は「家族(特に両親)」であると考えられています。ヒトヘルペスウイルス6型や7型は、ほとんどの人が子供の頃に知らないうちにかかっており(不顕性感染)、その後は体内にウイルスが潜伏し続けています。そして、健康な大人の唾液中にも、このウイルスが断続的に排出されていることが分かっているのです。つまり、両親が赤ちゃんに話しかけたり、キスをしたり、食べ物を分け与えたりといった、ごく日常的な愛情表現の中で、気づかないうちにウイルスを赤ちゃんにうつしているケースが非常に多いのです。これは、誰のせいでもなく、防ぎようのない、ごく自然な感染プロセスと言えます。生後6ヶ月頃になると、母親からもらった抗体が徐々に失われ、赤ちゃん自身の免疫でウイルスと戦わなければならなくなります。このタイミングで、家族からウイルスをもらい、初めての「発熱」という形で症状が現れるのが、突発性発疹なのです。保育園などで他の子供からうつる可能性ももちろんありますが、多くの場合、最も身近な大人から感染しているということを知っておくと、過度に感染源探しをしたり、他者を責めたりすることなく、冷静に病気と向き合うことができるでしょう。
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朝の一歩が激痛。かかとの痛みの正体
朝、ベッドから降りて最初の一歩を踏み出した瞬間、かかとに突き刺すような鋭い痛みが走る。しばらく歩いているうちに痛みは和らぐものの、また長時間座った後や、夕方になると痛みがぶり返す。このような症状に悩まされているなら、その痛みの正体は「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」である可能性が非常に高いです。足底腱膜炎は、成人の足の裏、特にかかとの痛みの原因として最も一般的な疾患です。足の裏には、かかとの骨から足の指の付け根に向かって、強靭な繊維状の膜「足底腱膜」が扇のように広がっています。この足底腱膜は、足のアーチ(土踏まず)を支え、歩行やランニング時の衝撃を吸収するクッションのような、非常に重要な役割を担っています。しかし、長時間の立ち仕事や、ランニングなどのスポーツ、あるいは加齢や体重増加によって、この足底腱膜に繰り返し過度な負担がかかると、腱膜の付け根であるかかとの部分に、微細な断裂や炎症が起こります。これが足底腱膜炎です。では、なぜ特に「朝の一歩目」が痛いのでしょうか。それは、私たちが眠っている間、足底腱膜は縮こまって硬くなった状態で修復しようとしています。しかし、朝起きて急に体重をかけると、その硬くなった腱膜が無理やり引き伸ばされるため、強い痛みが生じるのです。しばらく歩いて体が温まり、腱膜がほぐれてくると、痛みは一時的に軽減します。この特徴的な痛みのパターンこそが、足底腱膜炎を強く疑わせるサインなのです。痛みは、かかとの骨の前方、少し内側あたりに感じることが多いです。このつらい痛みを「そのうち治るだろう」と放置していると、炎症が慢性化し、治りにくくなるだけでなく、痛みをかばうことで膝や腰など、他の部位にまで不調が広がってしまうこともあります。まずは、その痛みが体からのSOSであると認識し、適切な対処を始めることが重要です。
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耳鼻咽喉科でのめまいの検査。一体どんなことをするの?
ぐるぐる回るめまいで耳鼻咽喉科を受診した際、医師はどのような検査を行って、その原因を探っていくのでしょうか。めまいの検査は、患者さんにとっては少し特殊で、戸惑うものもあるかもしれませんが、その一つ一つが、耳の奥にある小さな平衡器官の異常を捉えるための、重要な手がかりとなります。その流れを知っておくことで、安心して検査に臨むことができます。まず、最も基本となるのが「問診」です。いつ、どんな状況で、どのくらいの時間、どのくらい激しいめまいが起きたか。めまいと同時に、難聴や耳鳴りはなかったか。過去に同じような経験はあるか。こうした情報が、診断の方向性を決める上で非常に重要になります。次に、めまいの診断に不可欠なのが「眼振(がんしん)検査」です。眼振とは、めまいが起きている時に、本人の意思とは関係なく、眼球が小刻みに揺れ動く現象のことです。この眼の動きを観察することで、平衡機能に異常があるかどうか、そして異常が耳(末梢性)にあるのか、脳(中枢性)にあるのかを判断することができます。医師は、患者さんの眼の動きを直接観察したり、「フレンツェル眼鏡」という、ピントが合わない特殊な拡大鏡を使って、微細な眼振を捉えたりします。さらに、赤外線CCDカメラを使って、暗闇の中での眼の動きを記録し、より客観的に評価することもあります。この眼振検査の一環として、特定の頭の動きでめまいが誘発されるかを調べる「頭位眼振検査」や「頭位変換眼振検査」が行われます。これは、ベッドに寝た状態で、頭を様々な方向に動かしたり、勢いよく頭の位置を変えたりする検査で、特に良性発作性頭位めまい症(BPPV)の診断には欠かせません。めまいが誘発されるため、少しつらい検査ですが、原因を特定するためには非常に重要です。また、めまいの原因がメニエール病など、聴覚に関わるものである可能性を探るために、「聴力検査」も必ず行われます。片方の耳だけに聴力低下がないかなどを調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、医師はめまいの原因を診断し、それぞれの病態に合わせた最適な治療方針を立てていくのです。
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子供の首の痛み。原因不明の不安と親のメンタルケア
自分の子供が、突然、原因もわからず体の痛みを訴える。それは、親にとって、自身の体調不良以上に心をかき乱される出来事です。「何か大変な病気なのではないか」「後遺症が残ったらどうしよう」「私のせいだろうか」。様々な不安が頭をよぎり、冷静でいるのが難しくなるのも当然のことです。特に、首の痛みのように、見た目にも異常(傾き)が分かりやすく、体の重要な部分である場合は、その心配は一層大きくなるでしょう。病院へ連れて行き、「環軸関節回旋位固定」といった診断名がついて、治療方針が決まれば、少しは安堵するかもしれません。しかし、そこからが新たな不安との戦いの始まりでもあります。「本当に治るのだろうか」「カラーを嫌がってつけてくれない」「いつまでこの状態が続くのか」。先の見えない状況は、親のメンタルを少しずつ削っていきます。このような時、親自身が自分の心の健康を保つために、いくつか意識しておきたいことがあります。まず、第一に「情報を集めすぎない、悪い情報に振り回されない」ことです。不安な時ほど、インターネットで病名について検索しがちですが、そこには稀な重症例や、信憑性の低い情報も溢れています。過度な情報は、不安を増幅させるだけです。信頼すべき情報は、目の前の主治医からの言葉だけ、と割り切りましょう。疑問や不安があれば、次の診察の際にメモにまとめておき、医師に直接質問するのが最も確実です。次に、「一人で抱え込まない」ことです。パートナーや、信頼できる友人、親などに、今の不安な気持ちを話してみましょう。ただ話を聞いてもらうだけでも、心は軽くなります。また、同じような経験をした人の話を聞くことも、大きな助けになるかもしれません。そして、「完璧な看病を目指さない」ことも大切です。子供が痛がっている姿を見るのはつらいですが、四六時中、親が緊張状態にあっては、身が持ちません。子供が眠っている時間や、パートナーが見てくれている時間には、意識的に自分自身がリラックスする時間を作りましょう。好きな音楽を聴く、温かいお茶を飲む、短い時間でも好きなことをする。親の心が安定していることが、子供にとって何よりの安心材料になります。子供の痛みは、必ず良くなる。そう信じて、自分自身の心も大切にしながら、この少し大変な時期を乗り越えていきましょう。
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ぐるぐる回るめまい。まず行くべきは何科?
ある日突然、自分自身や周りの景色が、まるでメリーゴーランドに乗っているかのように、ぐるぐると激しく回り始める。立っていることもできず、強い吐き気や嘔吐を伴う。このような「回転性めまい」は、非常に強い不安と恐怖を引き起こす、つらい症状です。この強烈なめまいに襲われた時、「脳に何か異常があるのでは?」とパニックになりがちですが、慌てて脳神経外科に駆け込む前に、まず受診を検討すべき診療科があります。結論から言うと、ぐるぐる回る回転性めまいの原因の多くは、脳ではなく「耳」の異常にあります。そのため、まず最初に受診すべき最も専門的な診療科は「耳鼻咽喉科」です。私たちの耳の奥(内耳)には、音を聞くための「蝸牛」と、体のバランスを保つための「三半規管」および「耳石器」という、二つの重要な器官があります。回転性めまいは、主にこの三半規管や耳石器といった「平衡感覚を司る器官」に何らかのトラブルが生じることで発生します。耳鼻咽喉科医は、この内耳の構造と機能のエキスパートです。問診でめまいの性質や持続時間を詳しく聞き取り、眼の動きを観察する「眼振検査」などを行うことで、めまいの原因が耳にあるのか、それとも他の場所にあるのかを的確に見極めることができます。そして、めまいの原因として最も頻度の高い「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」や、「メニエール病」、「前庭神経炎」といった、耳鼻咽喉科領域の疾患を診断し、それぞれの病気に合わせた専門的な治療を行います。もちろん、めまいの中には、脳梗塞や脳出血といった、脳の病気が原因で起こる危険なものも存在します。しかし、そうした脳が原因のめまいは、回転性であることは比較的少なく、むしろ「ふらふらする」「雲の上を歩いているよう」といった浮動性のめまいであることが多いです。また、ろれつが回らない、手足がしびれる、物が二重に見えるといった、他の神経症状を伴うのが特徴です。ぐるぐる回るめまいが主症状で、他に神経症状がない場合は、まずは耳の専門家である耳鼻咽喉科を受診すること。それが、的確な診断と、つらい症状からの早期回復への、最も確実な近道となります。
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親が手足口病に!大人が気をつけるべきお風呂の注意点
手足口病は子どもの病気と思われがちですが、免疫がなければ大人も感染します。そして、大人が感染した場合、子どもよりも症状が重症化し、高熱や耐え難いほどの喉の痛み、手足の激痛に苦しむことが少なくありません。もし、親であるあなた自身が手足口病にかかってしまった場合、自身の療養はもちろんのこと、子どもたちへ感染を広げないための徹底した対策が求められます。特にお風呂の時間は、家庭内感染の温床となり得るため、細心の注意が必要です。まず、大人が気をつけるべきことは、自身の症状のケアです。手足の発疹は、痛みや痒みを伴うことが多く、温かいお湯に浸かることで、かえって痛みが増す場合があります。熱すぎるお湯は避け、ぬるめのシャワーで短時間で済ませるのが賢明です。発疹部分をゴシゴシ擦ることは絶対に避け、石鹸の泡で優しく洗い流しましょう。そして、最も重要なのが、子どもへの感染を防ぐための対策です。あなたが最後にお風呂に入る「トリ入浴」を徹底してください。元気な子どもたちを先に入浴させ、あなたは家族全員が入浴を終えた後に、一人で入ります。これにより、浴槽のお湯を介した感染リスクを最小限に抑えることができます。入浴後は、浴槽をシャワーで軽く洗い流しておきましょう。タオル類は、言うまでもなく、家族とは完全に別のものを使用します。バスタオルはもちろん、洗顔用のフェイスタオル、手拭き用のハンドタオルも、自分専用のものを用意し、他の家族が誤って使わないように、置く場所も明確に分けてください。使用後のタオルは、すぐに洗濯カゴへ入れ、他の洗濯物とは分けて洗うか、高温で洗濯するとより安心です。お風呂から上がった後も油断は禁物です。あなたは、家の中の動く感染源となっている可能性があります。脱衣所の床やドアノブ、洗面台の蛇口など、あなたが触れた場所にはウイルスが付着していると考え、こまめに消毒するよう心がけましょう。また、子どもが小さく、お風呂に入れるのを手伝わなければならない場合は、使い捨てのビニール手袋を着用するなどの対策も有効です。自分がつらい状況だからこそ、愛する家族を守るための冷静で徹底した行動が求められるのです。
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子供の首の痛み。病院で伝えるべきポイントと検査の流れ
子供が突然の首の痛みを訴え、病院を受診した際、医師に的確な診断をしてもらうためには、保護者が状況を正確に伝えることが非常に重要です。診察時間を有効に使うために、事前に伝えるべきポイントを整理しておきましょう。まず、医師が最も知りたいのは、「いつから、どのようにして痛くなったか」という症状の経緯です。「昨日の朝、起きた時から首が傾いたままになっています」「2日前に公園ででんぐり返しをしてから、首を痛がるようになりました」「3日前に風邪を引いて、熱が下がった後から首を動かさなくなりました」といったように、具体的な時間経過や、きっかけとなった可能性のある出来事を伝えましょう。次に、「痛みの様子と、首以外の症状の有無」です。「どの方向を向くと痛がるか」「安静にしていても痛いのか」「首のどのあたりを痛がっているか」「熱はあるか、今はなくても数日前はあったか」「咳や鼻水といった風邪症状はあるか」「手足のしびれや、歩き方の異常はないか」など、観察して気づいたことを、できるだけ詳しく伝えてください。これらの情報は、医師が「環軸関節回旋位固定」なのか、あるいは他の病気なのかを鑑別する上で、非常に重要な手がかりとなります。病院では、これらの問診に続いて、医師による「診察」が行われます。子供の首がどのくらい動くか(可動域)、どこを押すと痛むか、神経に異常がないか(手足の感覚や力の入り具合をチェック)などを、慎重に評価します。そして、診断を確定させるために「画像検査」が行われます。最も基本となるのが「レントゲン(X線)検査」です。首を正面、側面、そして口を開けた状態など、いくつかの方向から撮影し、首の骨(頸椎)の位置関係に異常がないか、骨折や脱臼がないかを確認します。環軸関節回旋位固定が疑われる場合は、このレントゲン検査で、一番目と二番目の頸椎の関節がずれている様子が捉えられます。レントゲンだけでは診断が難しい場合や、神経症状があるなど、より深刻な病気が疑われる場合には、骨の状態をさらに詳しく見ることができる「CT検査」や、神経(脊髄)の状態を評価できる「MRI検査」が追加で行われることもあります。保護者からの正確な情報提供と、これらの専門的な検査を組み合わせることで、初めて的確な診断と、適切な治療に繋がるのです。