指の第一関節の痛みで整形外科を受診し、「ヘバーデン結節ですね」と診断された時、多くの人が「この痛みや変形は治るのだろうか」と不安に思うでしょう。残念ながら、現在の医療では、一度すり減ってしまった軟骨を元に戻したり、変形してしまった骨を完全に修復したりする根本的な治療法は確立されていません。そのため、ヘバーデン結節の治療は、主に「痛みを和らげ、症状の悪化を防ぎ、指の機能をできるだけ維持する」ことを目的とした「保存療法」が中心となります。整形外科で行われる主な保存療法は、以下の通りです。まず、基本となるのが「安静と生活指導」です。指先に負担のかかる作業(瓶の蓋を開ける、重い荷物を持つ、長時間のパソコン作業など)をできるだけ避け、関節を休ませることが痛みの緩和に繋がります。医師や理学療法士から、指に負担をかけないような道具の使い方や、日常生活での工夫についてアドバイスを受けることもあります。次に、「薬物療法」です。痛みが強い場合には、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や、貼り薬、塗り薬などが処方されます。これにより、関節の炎症を抑え、痛みを和らげます。ただし、内服薬の長期使用は胃腸障害などの副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。また、「装具療法(テーピングや固定具)」も有効な手段です。痛む関節をテーピングで固定することで、関節の動きを制限し、外部からの刺激を減らして痛みを軽減させます。特に、仕事や家事でどうしても指を使わなければならない場合に有効です。市販のテーピングでも可能ですが、正しい巻き方について、一度専門家に指導してもらうと良いでしょう。これらの保存療法で痛みが改善しない場合には、「ステロイド注射」が検討されることもあります。炎症を起こしている関節内に、直接ステロイド薬を注射することで、強力に炎症を抑え、痛みを劇的に改善させる効果が期待できます。ただし、繰り返し注射を行うと、腱を傷めるリスクなどもあるため、頻繁には行えません。これらの保存療法を組み合わせても、痛みが全く改善せず、日常生活に大きな支障をきたすような場合には、最終手段として「手術」が選択されることもあります。
ヘバーデン結節と診断されたら。整形外科での主な治療法