足の裏、特にかかとに痛みを感じると、多くの人が「足底腱膜炎」を疑います。確かに、それは最も頻度の高い原因ですが、かかとの痛みを引き起こす病気は、実はそれだけではありません。中には、異なるアプローチが必要な病気も隠れている可能性があるため、自己判断は禁物です。足底腱膜炎以外の、かかとの痛みの原因となる主な疾患を知っておきましょう。まず考えられるのが、「踵部脂肪体炎(しょうぶしぼうたいえん)」です。かかとの骨の下には、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす、特殊な脂肪組織のパッドがあります。この脂肪体が、加齢によって萎縮したり、強い衝撃を受けたりすることで炎症を起こし、痛むことがあります。足底腱膜炎のように朝の一歩目が特に痛いというよりは、長時間立っていたり、硬い地面を歩いたりすると、かかとの中心部がジンジンと痛むのが特徴です。次に、「踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)」です。これは、かかとの骨と足底腱膜の間にある、潤滑油の役割をする滑液包という袋が、繰り返しの摩擦や圧迫によって炎症を起こす病気です。症状は足底腱膜炎と非常に似ていますが、腫れや熱感を伴うこともあります。また、アキレス腱の付着部周辺、かかとの後ろ側が痛む場合は、「アキレス腱付着部炎」の可能性が考えられます。靴のかかと部分が当たって痛むことも多いです。子供や思春期のスポーツをしている少年の場合は、「踵骨骨端症(シーバー病)」を疑う必要があります。これは、成長期のかかとの骨の成長軟骨部分に、運動による過度な負荷がかかって炎症が起こるもので、成長痛の一種とされています。運動後に痛みが強くなるのが特徴です。さらに、頻度は低いですが、ランニングなどの繰り返しの衝撃によって、かかとの骨に微細な骨折が起こる「踵骨疲労骨折」や、腰からの神経が圧迫されることで、かかとに痛みやしびれが生じる「坐骨神経痛」なども、原因となることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法が異なります。正確な診断のためにも、かかとの痛みが続く場合は、必ず整形外科を受診することが大切です。
かかとの痛みは足底腱膜炎だけじゃない