口内炎と発熱は、子供特有のウイルス感染症と思われがちですが、大人であっても、これらの症状が同時に現れることは決して珍しくありません。大人の場合、その背景には、過労やストレス、睡眠不足などによる「免疫力の低下」が大きく関わっています。私たちの体は、免疫システムによって、日々、様々なウイルスや細菌の侵入から守られています。しかし、心身のストレスが続くと、この免疫力が低下し、普段なら問題にならないような病原体にも感染しやすくなってしまうのです。大人が口内炎と発熱を発症する原因として、子供と同じく「ヘルパンギーナ」や「手足口病」、「ヘルペス性口内炎」といったウイルス感染症が挙げられます。子供の頃にこれらのウイルスに感染した経験がなければ、大人になってから初めて感染し、発症することがあります。また、過去に感染していても、免疫力が著しく低下していると、別の型のウイルスに感染することもあります。特に、単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内に潜伏し、免疫力が落ちたタイミングで再活性化します。多くの場合は口唇ヘルペスとして現れますが、体調が極度に悪い時には、発熱を伴い、口の中に多数の口内炎を作ることもあります。また、ウイルス感染だけでなく、口の中にできた口内炎が、細菌による二次感染を起こすことでも発熱に繋がります。大きな口内炎や、傷ができた部分から細菌が侵入し、周囲の組織に強い炎症(蜂窩織炎など)を起こすと、高熱や強い痛みを引き起こすことがあります。さらに、頻度は低いですが、ベーチェット病やクローン病といった自己免疫疾患や、白血病などの血液疾患の初期症状として、治りにくい口内炎と原因不明の発熱が現れることもあり、注意が必要です。いずれにせよ、大人が口内炎と発熱を同時に経験するということは、体が「免疫力が限界に来ていますよ」というSOSを発しているサインです。単なる口のトラブルと軽視せず、十分な休養をとるとともに、原因を特定するために、内科や耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。