患者目線での医療サービス・選び方のガイド

2025年8月
  • 自宅でできるかかとの痛みを和らげるケア

    知識

    整形外科で足底腱膜炎と診断された、あるいはその疑いがある時、病院での治療と並行して、自宅でできるセルフケアを積極的に取り入れることは、痛みの緩和と早期回復に非常に有効です。日々の少しの工夫と努力が、つらいかかとの痛みを和らげる大きな助けとなります。まず、最も重要で基本的なセルフケアが「ストレッチ」です。足底腱膜炎の痛みの背景には、足底腱膜そのものの硬さだけでなく、それに繋がるアキレス腱や、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)の硬さが大きく影響しています。ふくらはぎが硬いと、歩行時に足底腱膜が過剰に引っ張られ、負担が増大するのです。そのため、ふくらはぎとアキレス腱をゆっくりと伸ばすストレッチを、毎日、特に朝起きた時や運動後、お風呂上がりに行うことが極めて重要です。壁に手をついて、足を前後に開き、後ろ足のかかとを床につけたまま、ふくらはぎが伸びるのを感じながら30秒ほどキープしましょう。また、足底腱膜そのものを直接伸ばすストレッチも効果的です。椅子に座り、痛い方の足を反対側の膝の上に乗せ、足の指を手で掴んで、ゆっくりと足の甲の方へ反らせます。足の裏がピンと張るのを感じながら、15秒ほど保持するのを数回繰り返します。次に、痛みが強い時には「アイシング(冷却)」が有効です。炎症を起こしている患部を冷やすことで、痛みを鎮める効果があります。凍らせたペットボトルや、タオルで包んだ保冷剤などを、痛むかかとの下に置いて15分ほどコロコロと転がすように冷やすと良いでしょう。ただし、やりすぎは凍傷の原因になるので注意が必要です。一方で、やってはいけないのが、痛みが強い急性期に、痛い部分をゴルフボールなどで強くグリグリとマッサージすることです。炎症を悪化させてしまう可能性があります。マッサージをするなら、痛みが少し落ち着いてから、優しく行うようにしましょう。これらのセルフケアは、即効性があるわけではありません。しかし、毎日根気よく続けることで、足の裏の柔軟性を取り戻し、痛みの起こりにくい足へと変えていくことができるのです。

  • 大人の口内炎と発熱。ストレスや免疫力低下が引き金に

    医療

    口内炎と発熱は、子供特有のウイルス感染症と思われがちですが、大人であっても、これらの症状が同時に現れることは決して珍しくありません。大人の場合、その背景には、過労やストレス、睡眠不足などによる「免疫力の低下」が大きく関わっています。私たちの体は、免疫システムによって、日々、様々なウイルスや細菌の侵入から守られています。しかし、心身のストレスが続くと、この免疫力が低下し、普段なら問題にならないような病原体にも感染しやすくなってしまうのです。大人が口内炎と発熱を発症する原因として、子供と同じく「ヘルパンギーナ」や「手足口病」、「ヘルペス性口内炎」といったウイルス感染症が挙げられます。子供の頃にこれらのウイルスに感染した経験がなければ、大人になってから初めて感染し、発症することがあります。また、過去に感染していても、免疫力が著しく低下していると、別の型のウイルスに感染することもあります。特に、単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内に潜伏し、免疫力が落ちたタイミングで再活性化します。多くの場合は口唇ヘルペスとして現れますが、体調が極度に悪い時には、発熱を伴い、口の中に多数の口内炎を作ることもあります。また、ウイルス感染だけでなく、口の中にできた口内炎が、細菌による二次感染を起こすことでも発熱に繋がります。大きな口内炎や、傷ができた部分から細菌が侵入し、周囲の組織に強い炎症(蜂窩織炎など)を起こすと、高熱や強い痛みを引き起こすことがあります。さらに、頻度は低いですが、ベーチェット病やクローン病といった自己免疫疾患や、白血病などの血液疾患の初期症状として、治りにくい口内炎と原因不明の発熱が現れることもあり、注意が必要です。いずれにせよ、大人が口内炎と発熱を同時に経験するということは、体が「免疫力が限界に来ていますよ」というSOSを発しているサインです。単なる口のトラブルと軽視せず、十分な休養をとるとともに、原因を特定するために、内科や耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

  • 整形外科医が語る踵の痛みの最新治療

    医療

    足底腱膜炎に代表される、かかとの痛み。その治療は、かつてはストレッチやインソール、痛み止めの注射といった保存療法が中心で、難治性のケースでは有効な手立てが少ないのが実情でした。しかし近年、このつらい痛みに対する治療法は、目覚ましい進歩を遂げています。整形外科医の立場から、かかとの痛みの最新治療の選択肢について解説します。まず、従来の保存療法で十分な効果が得られない難治性の足底腱膜炎に対して、非常に有効な選択肢として確立されたのが「体外衝撃波治療(ESWT)」です。これは、体の外から、痛みの原因となっている患部に、高出力の圧力波(衝撃波)を照射する治療法です。衝撃波の刺激によって、患部の血流が改善され、痛みを伝える神経の働きを麻痺させると同時に、組織の修復を促す成長因子が放出されることで、除痛効果と治癒促進効果が期待できます。治療は麻酔不要で、外来で15分程度で完了します。保険適用となっており、難治性の患者さんにとって、大きな希望となっています。さらに、近年、スポーツ選手のケガの治療などで注目を集めている「再生医療」も、かかとの痛みの治療に応用され始めています。その代表が「PRP(多血小板血漿)療法」です。これは、患者さん自身の血液を採取し、遠心分離機にかけて、組織の修復を促す成長因子が豊富に含まれる「血小板」を高濃度に濃縮した部分(PRP)を抽出します。そして、そのPRPを、傷んだ足底腱膜の患部に直接注射することで、自己治癒能力を最大限に引き出し、組織の修復を促す治療法です。まだ保険適用外の自由診療となりますが、自身の血液を用いるため安全性が高く、従来の治療で改善しなかった患者さんに対する新たな選択肢として期待されています。そして、これらの治療法を試しても、日常生活に著しい支障をきたすほどの痛みが改善しない、ごく一部のケースでは、最終手段として「手術」も考慮されます。内視鏡を用いて、硬くなった足底腱膜の一部を切離する手術などが行われます。このように、かかとの痛みの治療は、もはや「我慢するしかない」ものではなくなっています。様々な選択肢の中から、専門医と相談し、自分に合った最適な治療法を見つけていくことが可能な時代なのです。

  • 指の第一関節が痛い。ヘバーデン結節は何科へ行くべきか

    医療

    ふとした時に、指の第一関節(DIP関節)に痛みや腫れを感じる。指がこわばって動かしにくい、関節が赤く熱っぽい。こうした症状に気づいた時、特に40代以降の女性であれば、「ヘバーデン結節」という病気の可能性があります。この聞き慣れない名前の病気、いざ病院へ行こうにも「一体、何科を受診すればいいのだろう」と迷ってしまう方は少なくありません。関節の病気だから整形外科?それとも、リウマチの一種かもしれないからリウマチ科?この最初の診療科選びは、的確な診断と適切な治療への第一歩として非常に重要です。結論から言うと、ヘバーデン結節が疑われる場合に、まず受診すべき診療科は「整形外科」です。ヘバーデン結節は、指の第一関節の軟骨がすり減り、骨が変形することで痛みや腫れ、変形を引き起こす「変形性関節症」の一種です。骨や関節、靭帯、筋肉といった運動器の疾患を専門とする整形外科が、まさにこの病気の診断と治療の中心となります。整形外科では、まず問診で症状の詳しい経過を聞き、医師が直接指の状態を診察します。そして、診断を確定させるために「レントゲン(X線)検査」が行われます。レントゲンを撮ることで、関節の隙間が狭くなっていないか、骨のトゲ(骨棘:こつきょく)ができていないか、といったヘバーデン結節に特徴的な骨の変化を客観的に確認することができます。一方で、「リウマチ科」を受診した方が良いケースもあります。それは、指の第一関節だけでなく、第二関節や手首、あるいは全身の複数の関節に、左右対称性の腫れや痛み、そして朝の強いこわばりがある場合です。これは、免疫システムの異常によって起こる「関節リウマチ」の典型的な症状であり、ヘバーデン結節とは治療法が全く異なります。もし、どちらか判断に迷う場合は、まずは整形外科を受診し、そこでリウマチが疑われれば、専門であるリウマチ科へ紹介してもらう、という流れが一般的です。指の痛みを年のせいや使いすぎだと自己判断せず、まずは骨と関節の専門家である整形外科の扉を叩くこと。それが、つらい痛みと不安を解消するための、最も確実なスタートラインです。

  • 熱がないのに首が痛い。考えられる原因と危険なサイン

    医療

    子供が熱もなく、明らかなケガをしたわけでもないのに、突然「首が痛い」と訴える。この症状の裏には、様々な原因が隠れている可能性があります。そのほとんどは、前述した「環軸関節回旋位固定」のような、一時的で後遺症なく治るものですが、中には注意深く見守り、場合によっては緊急の対応が必要となる危険な病気のサインであることもあります。まず、最も一般的な原因は、やはり「環軸関節回旋位固定」です。寝違えのような姿勢や、軽い風邪が引き金になります。この場合、痛みは首の動きに伴うもので、安静にしていれば落ち着いており、手足のしびれや麻痺はありません。次に考えられるのが、「リンパ節炎」です。風邪のウイルスや細菌が原因で、首のリンパ節が腫れて痛むことがあります。首を触ると、コリコリとしたしこりに触れ、そこを押すと痛がります。この場合、痛みは首の動きそのものよりも、腫れたリンパ節の圧痛が主体となります。しかし、中には見逃してはならない「危険なサイン」も存在します。親が特に注意すべきなのは、以下のような症状です。手足のしびれや、力の入りにくさを伴う: 首の痛みだけでなく、「手がしびれる」「足がもつれて歩きにくい」「物をつかみにくそう」といった症状がある場合、首の骨(頸椎)の中を通る重要な神経(脊髄)が圧迫されている可能性があります。頸椎の骨折や脱臼、腫瘍などが原因として考えられ、緊急性の高い状態です。高熱を伴い始める、または痛みがどんどん強くなる: 最初は熱がなくても、後から高熱が出てきたり、痛みが我慢できないほど強くなったり、首がガチガチに硬直して動かせなくなったりする場合、「化膿性脊椎炎」や「細菌性髄膜炎」といった重篤な感染症の可能性があります。痛みが首だけでなく、背中や胸にまで広がる: 大動脈解離など、心臓や大きな血管の病気でも、首に痛みが出ることが稀にあります。転倒や転落など、明らかな外傷の後: たとえ直後は元気そうに見えても、後から首の痛みを訴え始めた場合は、頸椎に損傷を負っている可能性があります。これらの危険なサインが一つでも見られた場合は、様子を見ることなく、ただちに整形外科や、夜間であれば救急外লাইনে相談・受診してください。

  • メニエール病の可能性。めまいと難聴、耳鳴り

    医療

    ぐるぐる回る回転性めまいに加えて、「片方の耳の聞こえにくさ(難聴)」や、「キーン、ジーといった耳鳴り」、「耳が詰まった感じ(耳閉感)」を伴う場合、それは「メニエール病」のサインかもしれません。メニエール病は、内耳の病気の中でも特に有名ですが、その診断にはこれらの特徴的な症状がセットで現れることが重要となります。メニエール病の本体は、「内リンパ水腫」と考えられています。私たちの内耳は、内リンパ液という液体で満たされていますが、何らかの原因でこの内リンパ液が過剰に溜まり、水ぶくれのような状態(水腫)になってしまうのです。この水ぶくれが、平衡感覚を司る三半規管や耳石器、そして音を感じる蝸牛を内側から圧迫し、その機能を障害することで、メニエール病特有の症状が引き起こされます。メニエール病のめまいは、前触れなく突然やってくる、激しい回転性めまいです。その持続時間は、BPPV(良性発作性頭位めまい症)の数十秒に比べて長く、数十分から数時間にわたって続くのが特徴です。めまい発作中は、強い吐き気や嘔吐、冷や汗などを伴い、動くこともままならないほどのつらい状態になります。そして、このめまい発作と「連動して」、難聴や耳鳴り、耳閉感といった聴覚症状が悪化し、めまいが治まると共に、これらの症状も軽快するという「変動性」が、メニエール病の診断における非常に重要なポイントです。初期の段階では、発作が治まれば聴力も元に戻ることが多いですが、発作を何度も繰り返すうちに、徐々に聴力が低下し、元に戻らなくなってしまうこともあります。メニエール病の原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレスや睡眠不足、疲労などが、発作の引き金になると考えられています。治療は、まず発作を鎮めるための薬物療法(めまい止め、吐き気止め、循環改善薬など)が行われます。そして、発作を予防するために、利尿薬を使って内リンパ水腫を軽減させたり、生活習慣の改善(ストレス管理、十分な睡眠、塩分を控えた食事など)を行ったりすることが中心となります。繰り返すめまいと聴覚症状に悩まされている場合は、放置せずに、必ず耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが、聴力を守るためにも不可欠です。

  • 私が線維筋痛症と診断されるまでの長い道のり

    生活

    私の体に異変が起きたのは、3年前のことでした。最初は、ただの肩こりだと思っていました。しかし、その痛みは次第に背中、腰、そして両手足へと、まるで火事が燃え広がるように広がっていきました。朝、目が覚めると、体中がコンクリートで固められたようにこわばり、起き上がるまでに長い時間がかかります。インフルエンザの時の関節痛が、毎日、24時間続いているような感覚でした。それに加えて、常に頭に霧がかかったような「ブレインフォグ」と、いくら寝ても取れない鉛のような疲労感。私は、近所の整形外科を皮切りに、まさに「ドクターショッピング」の迷路に迷い込みました。整形外科では、「レントゲンに異常はない。ストレートネックのせいでしょう」。内科では、「血液検査はすべて正常です。自律神経失調症かもしれませんね」。脳神経外科では、「脳に異常はありません。ストレスでしょう」。どの医師も、私の訴える激しい痛みを真剣に受け止めてはくれませんでした。検査結果という「客観的な証拠」がない私の痛みは、ただの「気のせい」や「怠け」として扱われ、私は次第に、自分の感覚がおかしいのではないか、と自分自身を責めるようになりました。仕事も休みがちになり、友人との約束もドタキャンする毎日。誰にも理解されない痛みを抱え、私は社会から孤立していきました。転機が訪れたのは、痛み始めてから2年が過ぎた頃でした。藁にもすがる思いで、インターネットで自分の症状を検索していた時、「線維筋痛症」という病名にたどり着いたのです。そこに書かれていた症状のリストは、驚くほど、私の状態と一致していました。そして、「専門はリウマチ科」という一文を見つけ、私は最後の望みをかけて、大学病院のリウマチ・膠原病内科の予約を取りました。初診の日、私の話をじっくりと聞いたリウマチ専門医は、全身の圧痛点を丁寧に診察した後、静かにこう言いました。「大変でしたね。これは、線維筋痛症で間違いないでしょう」。その瞬間、私は、長くて暗いトンネルの先にかすかな光が見えたような気がして、診察室で涙が止まらなくなりました。病名がついたからといって、痛みが消えるわけではありません。しかし、「あなたの痛みは、病気によるものです」と認めてもらえたこと。それが、私にとって、病気と向き合うための、何よりも大きな一歩となったのです。

  • 自分でできるヘバーデン結節のセルフケア

    知識

    ヘバーデン結節と診断されたら、整形外科での治療と並行して、自分自身でできるセルフケアを日常生活に取り入れることが、痛みの緩和と症状の進行予防に非常に有効です。日々の少しの工夫と心がけが、つらい症状と上手に向き合っていくための大きな助けとなります。まず、最も大切なセルフケアは「指を休ませること」と「負担を減らすこと」です。痛みが強い時は、指先に力を入れる動作は極力避けましょう。例えば、ペットボトルの蓋が開けにくい時は、オープナーなどの便利グッズを活用する。重いフライパンや鍋は両手で持つ。パソコンのキーボードを強く叩きすぎないように意識する。こうした小さな工夫の積み重ねが、関節への負担を大きく減らします。また、痛む関節を「温める」ことも効果的です。血行が良くなることで、筋肉の緊張がほぐれ、痛みが和らぎます。お風呂でゆっくりと指を温めたり、温かいお湯の中で指の曲げ伸ばしをしたりするのも良いでしょう。ただし、関節が赤く腫れて熱を持っている「急性期」には、温めるとかえって炎症を悪化させることがあるため、冷たいタオルなどで軽く冷やす方が適している場合もあります。どちらが良いか迷う場合は、医師に相談しましょう。次に、痛みの緩和と関節の保護に役立つのが「テーピング」です。痛む第一関節をぐるりと一周、あるいは関節をまたぐように十字にテーピングを巻くことで、関節の動きが適度に制限され、安定感が増し、痛みが軽減します。伸縮性のあるテーピングテープを使い、きつく締めすぎないように注意しましょう。さらに、近年注目されているのが「食事によるケア」です。ヘバーデン結節と女性ホルモン(エストロゲン)の減少との関連が指摘されており、エストロゲンと似た働きをする「大豆イソフラボン」を含む食品(納豆、豆腐、豆乳など)を積極的に摂ることが、症状の緩和に繋がる可能性があると言われています。また、エクオールという、大豆イソフラボンから腸内細菌によって作られる成分のサプリメントも、選択肢の一つとして考えられます。これらのセルフケアは、即効性があるものではありません。しかし、根気よく続けることで、つらい痛みと付き合いながらも、自分らしい生活を維持していくための大きな力となるはずです。

  • ヘバーデン結節と上手に向き合うために。知っておきたいこと

    医療

    ヘバーデン結節は、命に関わる病気ではありません。しかし、指の痛みや変形は、着替えや料理といった日常生活の些細な動作を困難にし、見た目の変化は、精神的にも大きなストレスとなり得ます。この長く付き合っていく可能性のある病気と、少しでも前向きに向き合っていくためには、いくつかの大切な心構えがあります。まず、第一に「正しい知識を持つこと」です。ヘバーデン結節が、加齢や女性ホルモンの影響を受ける、ありふれた変形性関節症の一種であることを理解しましょう。インターネット上には、不安を煽るような情報や、科学的根拠の乏しい治療法が溢れていますが、まずは整形外科医などの専門家から、正確な情報を得ることが重要です。病気の自然な経過(痛みのピークを過ぎれば、痛みは和らいでいくことが多い)を知るだけでも、将来への過度な不安は軽減されるはずです。次に、「完璧を求めず、病気を受け入れること」です。指の変形を完全に元に戻すことは難しい、という現実を受け入れるのはつらいことかもしれません。しかし、「治らない」と悲観するのではなく、「痛みとどう付き合っていくか」「この指で、どうすれば快適に生活できるか」という視点に切り替えることが大切です。痛みは、体からの「少し休んで」というサインです。無理をせず、痛い時には休む、便利な道具に頼る、といった柔軟な対応を心がけましょう。そして、「一人で抱え込まないこと」も非常に重要です。同じ病気を抱える人の体験談を聞いたり、家族や友人に、つらい気持ちや、日常生活で困っていることを話してみましょう。痛みを分かってもらう、手伝ってもらうだけで、心身の負担は大きく軽くなります。また、痛みが強い時期には、専門家の助けを借りることをためらわないでください。整形外科での治療はもちろん、テーピングの方法や、指に負担をかけない生活動作については、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門家が、具体的なアドバイスをくれます。ヘバーデン結節は、あなたの人生の一部になるかもしれませんが、あなたの人生の全てではありません。正しい知識を持ち、上手に工夫し、周りのサポートを得ながら、痛みや変形と共存していく道は、必ず見つかるはずです。

  • かかとの痛みは足底腱膜炎だけじゃない

    医療

    足の裏、特にかかとに痛みを感じると、多くの人が「足底腱膜炎」を疑います。確かに、それは最も頻度の高い原因ですが、かかとの痛みを引き起こす病気は、実はそれだけではありません。中には、異なるアプローチが必要な病気も隠れている可能性があるため、自己判断は禁物です。足底腱膜炎以外の、かかとの痛みの原因となる主な疾患を知っておきましょう。まず考えられるのが、「踵部脂肪体炎(しょうぶしぼうたいえん)」です。かかとの骨の下には、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす、特殊な脂肪組織のパッドがあります。この脂肪体が、加齢によって萎縮したり、強い衝撃を受けたりすることで炎症を起こし、痛むことがあります。足底腱膜炎のように朝の一歩目が特に痛いというよりは、長時間立っていたり、硬い地面を歩いたりすると、かかとの中心部がジンジンと痛むのが特徴です。次に、「踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)」です。これは、かかとの骨と足底腱膜の間にある、潤滑油の役割をする滑液包という袋が、繰り返しの摩擦や圧迫によって炎症を起こす病気です。症状は足底腱膜炎と非常に似ていますが、腫れや熱感を伴うこともあります。また、アキレス腱の付着部周辺、かかとの後ろ側が痛む場合は、「アキレス腱付着部炎」の可能性が考えられます。靴のかかと部分が当たって痛むことも多いです。子供や思春期のスポーツをしている少年の場合は、「踵骨骨端症(シーバー病)」を疑う必要があります。これは、成長期のかかとの骨の成長軟骨部分に、運動による過度な負荷がかかって炎症が起こるもので、成長痛の一種とされています。運動後に痛みが強くなるのが特徴です。さらに、頻度は低いですが、ランニングなどの繰り返しの衝撃によって、かかとの骨に微細な骨折が起こる「踵骨疲労骨折」や、腰からの神経が圧迫されることで、かかとに痛みやしびれが生じる「坐骨神経痛」なども、原因となることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法が異なります。正確な診断のためにも、かかとの痛みが続く場合は、必ず整形外科を受診することが大切です。