患者目線での医療サービス・選び方のガイド

医療
  • 整形外科医が解説。子供の首の痛みの診断と治療の実際

    医療

    整形外科の外来に、首を傾けて泣きそうな顔をしたお子さんが、心配そうな保護者の方に連れられてやってくる。多くの場合、その原因は「環軸関節回旋位固定」ですが、私たちは常に、その背後に隠れているかもしれない重篤な疾患の可能性を念頭に置きながら、慎重に診察を進めていきます。まず、私たちが最も重視するのは、保護者の方からの詳細な「病歴聴取(問診)」です。いつから、どんなきっかけで、どの程度痛いのか。熱や風邪症状はなかったか。そして何より、「手足のしびれや麻痺、歩行障害がないか」という、脊髄症状の有無を繰り返し確認します。この情報が、その後の診断の方向性を大きく左右します。次に、身体診察です。私たちは、お子さんを怖がらせないように、優しく声をかけながら、首がどの方向にどのくらい動くのか、どこを押すと痛みが強まるのかを丁寧に調べます。そして、手足の感覚や筋力、反射などをチェックし、神経学的な異常がないことを確認します。この時点で、脊髄症状など緊急性の高いサインがなければ、次のステップとして画像検査に進みます。基本となるのは「レントゲン検査」です。特に、口を開けて撮影する「開口位撮影」は、環軸関節の状態を評価するために不可欠です。この画像で、環椎と軸椎の歯突起との位置関係に非対称性が見られれば、環軸関節回旋位固定の診断がほぼ確定します。診断がつけば、治療の第一歩は「安静と固定」です。柔らかい素材でできた頸椎カラーを装着してもらい、首への負担を減らします。同時に、痛みに対してはアセトアミノフェンなどの安全な鎮痛剤を処方します。ほとんどのケース(約9割)は、この保存的な治療で、数日から2週間程度で自然に整復され、症状は改善します。しかし、2週間以上たっても改善しない「難治性」のケースや、最初からズレが大きい場合には、「入院による持続的な牽引治療」が必要となります。これは、頭部に専用の器具を装着し、ベッドの上で、軽い重りを使ってゆっくりと首を引っ張り続け、時間をかけて関節を元の位置に戻していく方法です。時間はかかりますが、非常に有効な治療法です。ごく稀に、これらの治療でも整復されない場合には、手術が検討されることもありますが、そこに至るケースは極めてまれです。子供の首の痛みは、親御さんを非常に不安にさせますが、そのほとんどは適切な診断と治療によって、後遺症なく回復します。

  • 突発性発疹に二回かかることはあるの?

    医療

    「突発性発疹は、一度かかったらもうかからない」。そう信じている保護者の方は多いのではないでしょうか。しかし、実際に「うちの子、突発性発疹に二回かかったんです」という話を耳にすることがあります。これは、果たして本当なのでしょうか。結論から言うと、「はい、突発性発疹に二回かかることはあります」。これは決して珍しいことではなく、医学的にも十分に起こり得ることです。その理由を理解するためには、突発性発疹の原因となるウイルスについて知る必要があります。突発性発疹は、単一のウイルスによって引き起こされる病気ではありません。主な原因ウイルスは、「ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)」と「ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)」という、二つの異なるタイプのウイルスなのです。この二つのウイルスは、親戚のような関係にありますが、互いに免疫の交差(一方にかかると、もう一方にもかかりにくくなること)は、ほとんどありません。つまり、HHV-6が原因の突発性発疹にかかって免疫ができたとしても、HHV-7に対する免疫はできないため、後日、HHV-7に感染すれば、再び同じような症状、つまり高熱とその後の発疹を経験することになるのです。これが、「突発性発疹に二回かかる」現象の正体です。一般的に、最初の突発性発疹(初感染)の多くは、生後6ヶ月から1歳半頃に、HHV-6によって引き起こされると言われています。そして、二回目の突発性発疹は、それよりも少し年齢が上がってから、HHV-7に感染することで起こります。二回目の症状は、一回目に比べて熱がそれほど高くならなかったり、発疹が少なかったりと、比較的軽症で済むことが多いとも言われています。しかし、症状の出方には個人差があります。もし、一度突発性発疹にかかったはずのお子さんが、再び原因不明の高熱と、解熱後の発疹を経験した場合は、「また突発性発疹かもしれない」と考え、小児科を受診するのが良いでしょう。医師に「以前にも突発性発疹と診断されたことがあります」と伝えることで、よりスムーズな診断に繋がります。二回かかることは、決して異常なことではない、と知っておくだけで、親の心の負担も少し軽くなるかもしれません。

  • ドクターショッピング。線維筋痛症患者が彷徨う理由

    医療

    「気のせいだ」「怠けているだけだ」「精神的なものでしょう」。全身の激しい痛みを訴えても、検査では何の異常も見つからず、医師から心ない言葉をかけられ、次から次へと病院を渡り歩く「ドクターショッピング」。これは、線維筋痛症の患者さんの多くが、確定診断に至るまでに経験する、つらく孤独な道のりです。なぜ、このようなことが起こってしまうのでしょうか。その最大の理由は、線維筋痛症という病気が、まだ社会的に、そして医療者の間でも十分に認知・理解されていないことにあります。線維筋痛症の痛みは、レントゲンやMRI、血液検査といった、一般的な検査では「異常なし」と出てしまいます。目に見える炎症や組織の破壊がないため、痛みの客観的な証拠を示しにくいのです。そのため、一部の医師からは、「検査で異常がないのだから、病気ではない」と判断され、精神的な問題として片付けられてしまったり、詐病を疑われたりすることさえあります。患者さんは、整形外科、内科、脳神経外科、婦人科など、痛む部位や症状に合わせて様々な診療科を訪れます。しかし、それぞれの科では、その専門領域の病気しか念頭にないことが多く、「うちの科の病気ではないですね」と言われ、また別の科へ行くように促されます。この繰り返しの中で、患者さんは「自分の痛みは誰にも分かってもらえない」という絶望感と、医療への不信感を募らせていきます。診断がつかないまま年月が過ぎるうちに、痛みは慢性化し、仕事や日常生活もままならなくなり、社会的にも孤立してしまうケースは少なくありません。この負のスパイラルを断ち切るためには、まず、この病気を正しく診断できる専門医(主にリウマチ科・膠原病内科)に、いかに早くたどり着けるかが鍵となります。そして、医療者側も、「検査で異常がない、しかし激しい痛みを訴える患者さん」を前にした時、安易に心の問題と片付けるのではなく、「線維筋痛症」という病気の可能性を常に念頭に置く姿勢が求められます。患者さんがドクターショッピングという暗いトンネルを彷徨うことなく、早期に適切な診断と治療に繋がれる社会の実現が、急務とされています。

  • 大人の口内炎と発熱。ストレスや免疫力低下が引き金に

    医療

    口内炎と発熱は、子供特有のウイルス感染症と思われがちですが、大人であっても、これらの症状が同時に現れることは決して珍しくありません。大人の場合、その背景には、過労やストレス、睡眠不足などによる「免疫力の低下」が大きく関わっています。私たちの体は、免疫システムによって、日々、様々なウイルスや細菌の侵入から守られています。しかし、心身のストレスが続くと、この免疫力が低下し、普段なら問題にならないような病原体にも感染しやすくなってしまうのです。大人が口内炎と発熱を発症する原因として、子供と同じく「ヘルパンギーナ」や「手足口病」、「ヘルペス性口内炎」といったウイルス感染症が挙げられます。子供の頃にこれらのウイルスに感染した経験がなければ、大人になってから初めて感染し、発症することがあります。また、過去に感染していても、免疫力が著しく低下していると、別の型のウイルスに感染することもあります。特に、単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内に潜伏し、免疫力が落ちたタイミングで再活性化します。多くの場合は口唇ヘルペスとして現れますが、体調が極度に悪い時には、発熱を伴い、口の中に多数の口内炎を作ることもあります。また、ウイルス感染だけでなく、口の中にできた口内炎が、細菌による二次感染を起こすことでも発熱に繋がります。大きな口内炎や、傷ができた部分から細菌が侵入し、周囲の組織に強い炎症(蜂窩織炎など)を起こすと、高熱や強い痛みを引き起こすことがあります。さらに、頻度は低いですが、ベーチェット病やクローン病といった自己免疫疾患や、白血病などの血液疾患の初期症状として、治りにくい口内炎と原因不明の発熱が現れることもあり、注意が必要です。いずれにせよ、大人が口内炎と発熱を同時に経験するということは、体が「免疫力が限界に来ていますよ」というSOSを発しているサインです。単なる口のトラブルと軽視せず、十分な休養をとるとともに、原因を特定するために、内科や耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

  • 整形外科医が語る踵の痛みの最新治療

    医療

    足底腱膜炎に代表される、かかとの痛み。その治療は、かつてはストレッチやインソール、痛み止めの注射といった保存療法が中心で、難治性のケースでは有効な手立てが少ないのが実情でした。しかし近年、このつらい痛みに対する治療法は、目覚ましい進歩を遂げています。整形外科医の立場から、かかとの痛みの最新治療の選択肢について解説します。まず、従来の保存療法で十分な効果が得られない難治性の足底腱膜炎に対して、非常に有効な選択肢として確立されたのが「体外衝撃波治療(ESWT)」です。これは、体の外から、痛みの原因となっている患部に、高出力の圧力波(衝撃波)を照射する治療法です。衝撃波の刺激によって、患部の血流が改善され、痛みを伝える神経の働きを麻痺させると同時に、組織の修復を促す成長因子が放出されることで、除痛効果と治癒促進効果が期待できます。治療は麻酔不要で、外来で15分程度で完了します。保険適用となっており、難治性の患者さんにとって、大きな希望となっています。さらに、近年、スポーツ選手のケガの治療などで注目を集めている「再生医療」も、かかとの痛みの治療に応用され始めています。その代表が「PRP(多血小板血漿)療法」です。これは、患者さん自身の血液を採取し、遠心分離機にかけて、組織の修復を促す成長因子が豊富に含まれる「血小板」を高濃度に濃縮した部分(PRP)を抽出します。そして、そのPRPを、傷んだ足底腱膜の患部に直接注射することで、自己治癒能力を最大限に引き出し、組織の修復を促す治療法です。まだ保険適用外の自由診療となりますが、自身の血液を用いるため安全性が高く、従来の治療で改善しなかった患者さんに対する新たな選択肢として期待されています。そして、これらの治療法を試しても、日常生活に著しい支障をきたすほどの痛みが改善しない、ごく一部のケースでは、最終手段として「手術」も考慮されます。内視鏡を用いて、硬くなった足底腱膜の一部を切離する手術などが行われます。このように、かかとの痛みの治療は、もはや「我慢するしかない」ものではなくなっています。様々な選択肢の中から、専門医と相談し、自分に合った最適な治療法を見つけていくことが可能な時代なのです。

  • 指の第一関節が痛い。ヘバーデン結節は何科へ行くべきか

    医療

    ふとした時に、指の第一関節(DIP関節)に痛みや腫れを感じる。指がこわばって動かしにくい、関節が赤く熱っぽい。こうした症状に気づいた時、特に40代以降の女性であれば、「ヘバーデン結節」という病気の可能性があります。この聞き慣れない名前の病気、いざ病院へ行こうにも「一体、何科を受診すればいいのだろう」と迷ってしまう方は少なくありません。関節の病気だから整形外科?それとも、リウマチの一種かもしれないからリウマチ科?この最初の診療科選びは、的確な診断と適切な治療への第一歩として非常に重要です。結論から言うと、ヘバーデン結節が疑われる場合に、まず受診すべき診療科は「整形外科」です。ヘバーデン結節は、指の第一関節の軟骨がすり減り、骨が変形することで痛みや腫れ、変形を引き起こす「変形性関節症」の一種です。骨や関節、靭帯、筋肉といった運動器の疾患を専門とする整形外科が、まさにこの病気の診断と治療の中心となります。整形外科では、まず問診で症状の詳しい経過を聞き、医師が直接指の状態を診察します。そして、診断を確定させるために「レントゲン(X線)検査」が行われます。レントゲンを撮ることで、関節の隙間が狭くなっていないか、骨のトゲ(骨棘:こつきょく)ができていないか、といったヘバーデン結節に特徴的な骨の変化を客観的に確認することができます。一方で、「リウマチ科」を受診した方が良いケースもあります。それは、指の第一関節だけでなく、第二関節や手首、あるいは全身の複数の関節に、左右対称性の腫れや痛み、そして朝の強いこわばりがある場合です。これは、免疫システムの異常によって起こる「関節リウマチ」の典型的な症状であり、ヘバーデン結節とは治療法が全く異なります。もし、どちらか判断に迷う場合は、まずは整形外科を受診し、そこでリウマチが疑われれば、専門であるリウマチ科へ紹介してもらう、という流れが一般的です。指の痛みを年のせいや使いすぎだと自己判断せず、まずは骨と関節の専門家である整形外科の扉を叩くこと。それが、つらい痛みと不安を解消するための、最も確実なスタートラインです。

  • 熱がないのに首が痛い。考えられる原因と危険なサイン

    医療

    子供が熱もなく、明らかなケガをしたわけでもないのに、突然「首が痛い」と訴える。この症状の裏には、様々な原因が隠れている可能性があります。そのほとんどは、前述した「環軸関節回旋位固定」のような、一時的で後遺症なく治るものですが、中には注意深く見守り、場合によっては緊急の対応が必要となる危険な病気のサインであることもあります。まず、最も一般的な原因は、やはり「環軸関節回旋位固定」です。寝違えのような姿勢や、軽い風邪が引き金になります。この場合、痛みは首の動きに伴うもので、安静にしていれば落ち着いており、手足のしびれや麻痺はありません。次に考えられるのが、「リンパ節炎」です。風邪のウイルスや細菌が原因で、首のリンパ節が腫れて痛むことがあります。首を触ると、コリコリとしたしこりに触れ、そこを押すと痛がります。この場合、痛みは首の動きそのものよりも、腫れたリンパ節の圧痛が主体となります。しかし、中には見逃してはならない「危険なサイン」も存在します。親が特に注意すべきなのは、以下のような症状です。手足のしびれや、力の入りにくさを伴う: 首の痛みだけでなく、「手がしびれる」「足がもつれて歩きにくい」「物をつかみにくそう」といった症状がある場合、首の骨(頸椎)の中を通る重要な神経(脊髄)が圧迫されている可能性があります。頸椎の骨折や脱臼、腫瘍などが原因として考えられ、緊急性の高い状態です。高熱を伴い始める、または痛みがどんどん強くなる: 最初は熱がなくても、後から高熱が出てきたり、痛みが我慢できないほど強くなったり、首がガチガチに硬直して動かせなくなったりする場合、「化膿性脊椎炎」や「細菌性髄膜炎」といった重篤な感染症の可能性があります。痛みが首だけでなく、背中や胸にまで広がる: 大動脈解離など、心臓や大きな血管の病気でも、首に痛みが出ることが稀にあります。転倒や転落など、明らかな外傷の後: たとえ直後は元気そうに見えても、後から首の痛みを訴え始めた場合は、頸椎に損傷を負っている可能性があります。これらの危険なサインが一つでも見られた場合は、様子を見ることなく、ただちに整形外科や、夜間であれば救急外লাইনে相談・受診してください。

  • メニエール病の可能性。めまいと難聴、耳鳴り

    医療

    ぐるぐる回る回転性めまいに加えて、「片方の耳の聞こえにくさ(難聴)」や、「キーン、ジーといった耳鳴り」、「耳が詰まった感じ(耳閉感)」を伴う場合、それは「メニエール病」のサインかもしれません。メニエール病は、内耳の病気の中でも特に有名ですが、その診断にはこれらの特徴的な症状がセットで現れることが重要となります。メニエール病の本体は、「内リンパ水腫」と考えられています。私たちの内耳は、内リンパ液という液体で満たされていますが、何らかの原因でこの内リンパ液が過剰に溜まり、水ぶくれのような状態(水腫)になってしまうのです。この水ぶくれが、平衡感覚を司る三半規管や耳石器、そして音を感じる蝸牛を内側から圧迫し、その機能を障害することで、メニエール病特有の症状が引き起こされます。メニエール病のめまいは、前触れなく突然やってくる、激しい回転性めまいです。その持続時間は、BPPV(良性発作性頭位めまい症)の数十秒に比べて長く、数十分から数時間にわたって続くのが特徴です。めまい発作中は、強い吐き気や嘔吐、冷や汗などを伴い、動くこともままならないほどのつらい状態になります。そして、このめまい発作と「連動して」、難聴や耳鳴り、耳閉感といった聴覚症状が悪化し、めまいが治まると共に、これらの症状も軽快するという「変動性」が、メニエール病の診断における非常に重要なポイントです。初期の段階では、発作が治まれば聴力も元に戻ることが多いですが、発作を何度も繰り返すうちに、徐々に聴力が低下し、元に戻らなくなってしまうこともあります。メニエール病の原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレスや睡眠不足、疲労などが、発作の引き金になると考えられています。治療は、まず発作を鎮めるための薬物療法(めまい止め、吐き気止め、循環改善薬など)が行われます。そして、発作を予防するために、利尿薬を使って内リンパ水腫を軽減させたり、生活習慣の改善(ストレス管理、十分な睡眠、塩分を控えた食事など)を行ったりすることが中心となります。繰り返すめまいと聴覚症状に悩まされている場合は、放置せずに、必ず耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが、聴力を守るためにも不可欠です。

  • ヘバーデン結節と上手に向き合うために。知っておきたいこと

    医療

    ヘバーデン結節は、命に関わる病気ではありません。しかし、指の痛みや変形は、着替えや料理といった日常生活の些細な動作を困難にし、見た目の変化は、精神的にも大きなストレスとなり得ます。この長く付き合っていく可能性のある病気と、少しでも前向きに向き合っていくためには、いくつかの大切な心構えがあります。まず、第一に「正しい知識を持つこと」です。ヘバーデン結節が、加齢や女性ホルモンの影響を受ける、ありふれた変形性関節症の一種であることを理解しましょう。インターネット上には、不安を煽るような情報や、科学的根拠の乏しい治療法が溢れていますが、まずは整形外科医などの専門家から、正確な情報を得ることが重要です。病気の自然な経過(痛みのピークを過ぎれば、痛みは和らいでいくことが多い)を知るだけでも、将来への過度な不安は軽減されるはずです。次に、「完璧を求めず、病気を受け入れること」です。指の変形を完全に元に戻すことは難しい、という現実を受け入れるのはつらいことかもしれません。しかし、「治らない」と悲観するのではなく、「痛みとどう付き合っていくか」「この指で、どうすれば快適に生活できるか」という視点に切り替えることが大切です。痛みは、体からの「少し休んで」というサインです。無理をせず、痛い時には休む、便利な道具に頼る、といった柔軟な対応を心がけましょう。そして、「一人で抱え込まないこと」も非常に重要です。同じ病気を抱える人の体験談を聞いたり、家族や友人に、つらい気持ちや、日常生活で困っていることを話してみましょう。痛みを分かってもらう、手伝ってもらうだけで、心身の負担は大きく軽くなります。また、痛みが強い時期には、専門家の助けを借りることをためらわないでください。整形外科での治療はもちろん、テーピングの方法や、指に負担をかけない生活動作については、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門家が、具体的なアドバイスをくれます。ヘバーデン結節は、あなたの人生の一部になるかもしれませんが、あなたの人生の全てではありません。正しい知識を持ち、上手に工夫し、周りのサポートを得ながら、痛みや変形と共存していく道は、必ず見つかるはずです。

  • かかとの痛みは足底腱膜炎だけじゃない

    医療

    足の裏、特にかかとに痛みを感じると、多くの人が「足底腱膜炎」を疑います。確かに、それは最も頻度の高い原因ですが、かかとの痛みを引き起こす病気は、実はそれだけではありません。中には、異なるアプローチが必要な病気も隠れている可能性があるため、自己判断は禁物です。足底腱膜炎以外の、かかとの痛みの原因となる主な疾患を知っておきましょう。まず考えられるのが、「踵部脂肪体炎(しょうぶしぼうたいえん)」です。かかとの骨の下には、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす、特殊な脂肪組織のパッドがあります。この脂肪体が、加齢によって萎縮したり、強い衝撃を受けたりすることで炎症を起こし、痛むことがあります。足底腱膜炎のように朝の一歩目が特に痛いというよりは、長時間立っていたり、硬い地面を歩いたりすると、かかとの中心部がジンジンと痛むのが特徴です。次に、「踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)」です。これは、かかとの骨と足底腱膜の間にある、潤滑油の役割をする滑液包という袋が、繰り返しの摩擦や圧迫によって炎症を起こす病気です。症状は足底腱膜炎と非常に似ていますが、腫れや熱感を伴うこともあります。また、アキレス腱の付着部周辺、かかとの後ろ側が痛む場合は、「アキレス腱付着部炎」の可能性が考えられます。靴のかかと部分が当たって痛むことも多いです。子供や思春期のスポーツをしている少年の場合は、「踵骨骨端症(シーバー病)」を疑う必要があります。これは、成長期のかかとの骨の成長軟骨部分に、運動による過度な負荷がかかって炎症が起こるもので、成長痛の一種とされています。運動後に痛みが強くなるのが特徴です。さらに、頻度は低いですが、ランニングなどの繰り返しの衝撃によって、かかとの骨に微細な骨折が起こる「踵骨疲労骨折」や、腰からの神経が圧迫されることで、かかとに痛みやしびれが生じる「坐骨神経痛」なども、原因となることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法が異なります。正確な診断のためにも、かかとの痛みが続く場合は、必ず整形外科を受診することが大切です。