患者目線での医療サービス・選び方のガイド

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  • 熱がないのに首が痛い。考えられる原因と危険なサイン

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    子供が熱もなく、明らかなケガをしたわけでもないのに、突然「首が痛い」と訴える。この症状の裏には、様々な原因が隠れている可能性があります。そのほとんどは、前述した「環軸関節回旋位固定」のような、一時的で後遺症なく治るものですが、中には注意深く見守り、場合によっては緊急の対応が必要となる危険な病気のサインであることもあります。まず、最も一般的な原因は、やはり「環軸関節回旋位固定」です。寝違えのような姿勢や、軽い風邪が引き金になります。この場合、痛みは首の動きに伴うもので、安静にしていれば落ち着いており、手足のしびれや麻痺はありません。次に考えられるのが、「リンパ節炎」です。風邪のウイルスや細菌が原因で、首のリンパ節が腫れて痛むことがあります。首を触ると、コリコリとしたしこりに触れ、そこを押すと痛がります。この場合、痛みは首の動きそのものよりも、腫れたリンパ節の圧痛が主体となります。しかし、中には見逃してはならない「危険なサイン」も存在します。親が特に注意すべきなのは、以下のような症状です。手足のしびれや、力の入りにくさを伴う: 首の痛みだけでなく、「手がしびれる」「足がもつれて歩きにくい」「物をつかみにくそう」といった症状がある場合、首の骨(頸椎)の中を通る重要な神経(脊髄)が圧迫されている可能性があります。頸椎の骨折や脱臼、腫瘍などが原因として考えられ、緊急性の高い状態です。高熱を伴い始める、または痛みがどんどん強くなる: 最初は熱がなくても、後から高熱が出てきたり、痛みが我慢できないほど強くなったり、首がガチガチに硬直して動かせなくなったりする場合、「化膿性脊椎炎」や「細菌性髄膜炎」といった重篤な感染症の可能性があります。痛みが首だけでなく、背中や胸にまで広がる: 大動脈解離など、心臓や大きな血管の病気でも、首に痛みが出ることが稀にあります。転倒や転落など、明らかな外傷の後: たとえ直後は元気そうに見えても、後から首の痛みを訴え始めた場合は、頸椎に損傷を負っている可能性があります。これらの危険なサインが一つでも見られた場合は、様子を見ることなく、ただちに整形外科や、夜間であれば救急外লাইনে相談・受診してください。

  • メニエール病の可能性。めまいと難聴、耳鳴り

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    ぐるぐる回る回転性めまいに加えて、「片方の耳の聞こえにくさ(難聴)」や、「キーン、ジーといった耳鳴り」、「耳が詰まった感じ(耳閉感)」を伴う場合、それは「メニエール病」のサインかもしれません。メニエール病は、内耳の病気の中でも特に有名ですが、その診断にはこれらの特徴的な症状がセットで現れることが重要となります。メニエール病の本体は、「内リンパ水腫」と考えられています。私たちの内耳は、内リンパ液という液体で満たされていますが、何らかの原因でこの内リンパ液が過剰に溜まり、水ぶくれのような状態(水腫)になってしまうのです。この水ぶくれが、平衡感覚を司る三半規管や耳石器、そして音を感じる蝸牛を内側から圧迫し、その機能を障害することで、メニエール病特有の症状が引き起こされます。メニエール病のめまいは、前触れなく突然やってくる、激しい回転性めまいです。その持続時間は、BPPV(良性発作性頭位めまい症)の数十秒に比べて長く、数十分から数時間にわたって続くのが特徴です。めまい発作中は、強い吐き気や嘔吐、冷や汗などを伴い、動くこともままならないほどのつらい状態になります。そして、このめまい発作と「連動して」、難聴や耳鳴り、耳閉感といった聴覚症状が悪化し、めまいが治まると共に、これらの症状も軽快するという「変動性」が、メニエール病の診断における非常に重要なポイントです。初期の段階では、発作が治まれば聴力も元に戻ることが多いですが、発作を何度も繰り返すうちに、徐々に聴力が低下し、元に戻らなくなってしまうこともあります。メニエール病の原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレスや睡眠不足、疲労などが、発作の引き金になると考えられています。治療は、まず発作を鎮めるための薬物療法(めまい止め、吐き気止め、循環改善薬など)が行われます。そして、発作を予防するために、利尿薬を使って内リンパ水腫を軽減させたり、生活習慣の改善(ストレス管理、十分な睡眠、塩分を控えた食事など)を行ったりすることが中心となります。繰り返すめまいと聴覚症状に悩まされている場合は、放置せずに、必ず耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが、聴力を守るためにも不可欠です。

  • ヘバーデン結節と上手に向き合うために。知っておきたいこと

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    ヘバーデン結節は、命に関わる病気ではありません。しかし、指の痛みや変形は、着替えや料理といった日常生活の些細な動作を困難にし、見た目の変化は、精神的にも大きなストレスとなり得ます。この長く付き合っていく可能性のある病気と、少しでも前向きに向き合っていくためには、いくつかの大切な心構えがあります。まず、第一に「正しい知識を持つこと」です。ヘバーデン結節が、加齢や女性ホルモンの影響を受ける、ありふれた変形性関節症の一種であることを理解しましょう。インターネット上には、不安を煽るような情報や、科学的根拠の乏しい治療法が溢れていますが、まずは整形外科医などの専門家から、正確な情報を得ることが重要です。病気の自然な経過(痛みのピークを過ぎれば、痛みは和らいでいくことが多い)を知るだけでも、将来への過度な不安は軽減されるはずです。次に、「完璧を求めず、病気を受け入れること」です。指の変形を完全に元に戻すことは難しい、という現実を受け入れるのはつらいことかもしれません。しかし、「治らない」と悲観するのではなく、「痛みとどう付き合っていくか」「この指で、どうすれば快適に生活できるか」という視点に切り替えることが大切です。痛みは、体からの「少し休んで」というサインです。無理をせず、痛い時には休む、便利な道具に頼る、といった柔軟な対応を心がけましょう。そして、「一人で抱え込まないこと」も非常に重要です。同じ病気を抱える人の体験談を聞いたり、家族や友人に、つらい気持ちや、日常生活で困っていることを話してみましょう。痛みを分かってもらう、手伝ってもらうだけで、心身の負担は大きく軽くなります。また、痛みが強い時期には、専門家の助けを借りることをためらわないでください。整形外科での治療はもちろん、テーピングの方法や、指に負担をかけない生活動作については、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門家が、具体的なアドバイスをくれます。ヘバーデン結節は、あなたの人生の一部になるかもしれませんが、あなたの人生の全てではありません。正しい知識を持ち、上手に工夫し、周りのサポートを得ながら、痛みや変形と共存していく道は、必ず見つかるはずです。

  • かかとの痛みは足底腱膜炎だけじゃない

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    足の裏、特にかかとに痛みを感じると、多くの人が「足底腱膜炎」を疑います。確かに、それは最も頻度の高い原因ですが、かかとの痛みを引き起こす病気は、実はそれだけではありません。中には、異なるアプローチが必要な病気も隠れている可能性があるため、自己判断は禁物です。足底腱膜炎以外の、かかとの痛みの原因となる主な疾患を知っておきましょう。まず考えられるのが、「踵部脂肪体炎(しょうぶしぼうたいえん)」です。かかとの骨の下には、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす、特殊な脂肪組織のパッドがあります。この脂肪体が、加齢によって萎縮したり、強い衝撃を受けたりすることで炎症を起こし、痛むことがあります。足底腱膜炎のように朝の一歩目が特に痛いというよりは、長時間立っていたり、硬い地面を歩いたりすると、かかとの中心部がジンジンと痛むのが特徴です。次に、「踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)」です。これは、かかとの骨と足底腱膜の間にある、潤滑油の役割をする滑液包という袋が、繰り返しの摩擦や圧迫によって炎症を起こす病気です。症状は足底腱膜炎と非常に似ていますが、腫れや熱感を伴うこともあります。また、アキレス腱の付着部周辺、かかとの後ろ側が痛む場合は、「アキレス腱付着部炎」の可能性が考えられます。靴のかかと部分が当たって痛むことも多いです。子供や思春期のスポーツをしている少年の場合は、「踵骨骨端症(シーバー病)」を疑う必要があります。これは、成長期のかかとの骨の成長軟骨部分に、運動による過度な負荷がかかって炎症が起こるもので、成長痛の一種とされています。運動後に痛みが強くなるのが特徴です。さらに、頻度は低いですが、ランニングなどの繰り返しの衝撃によって、かかとの骨に微細な骨折が起こる「踵骨疲労骨折」や、腰からの神経が圧迫されることで、かかとに痛みやしびれが生じる「坐骨神経痛」なども、原因となることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法が異なります。正確な診断のためにも、かかとの痛みが続く場合は、必ず整形外科を受診することが大切です。

  • ヘバーデン結節と関節リウマチ。似ているようで全く違う病気

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    指の関節が痛んだり、腫れたりする時、多くの人が「リウマチではないか」と心配になります。特に、ヘバーデン結節は、指の変形を伴うため、関節リウマチと混同されがちです。しかし、この二つの病気は、見た目の症状は似ていても、その原因も、進行の仕方も、そして何より治療法も全く異なります。両者の違いを正しく理解することは、適切な診療科を選び、正しい治療を受けるために不可欠です。まず、症状が現れる「場所」に違いがあります。ヘバーデン結節が、指の最も先端に近い「第一関節(DIP関節)」に好発するのに対し、関節リウマチは、指の付け根に近い「第二関節(PIP関節)」や「付け根の関節(MP関節)」、そして「手首の関節」に症状が出やすいのが特徴です。また、ヘバーデン結節は、複数の指に現れることはあっても、症状が左右非対称であることも少なくありません。一方、関節リウマチは「左右対称性」に関節炎が起こるのが典型です。次に、病気の「原因」が根本的に異なります。ヘバーデン結節は、加齢や指の使いすぎ、遺伝的要因などが関与し、関節の軟骨がすり減っていく「変形性関節症」の一種です。いわば、関節の機械的な摩耗や老化が原因です。対して、関節リウマチは、本来体を守るべき免疫システムが暴走し、自分自身の関節を攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。関節を包む滑膜という組織に炎症が起こり、その炎症が骨や軟骨を破壊していきます。この原因の違いが、治療法の違いに直結します。ヘバーデン結節の治療は、痛みを和らげるための対症療法が中心です。痛み止めの内服薬や外用薬、テーピングによる固定、ステロイド注射などが行われます。一方、関節リウマチの治療は、異常な免疫反応そのものを抑え込むことが目的です。抗リウマチ薬や、生物学的製剤、JAK阻害薬といった専門的な薬剤を用いて、病気の進行を食い止め、関節破壊を防ぐことを目指します。もし、第一関節だけでなく、他の関節にも左右対称の腫れや痛み、そして朝の強いこわばりを感じる場合は、整形外科だけでなく、リウマチ科の受診を検討する必要があります。

  • ヘバーデン結節と診断されたら。整形外科での主な治療法

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    指の第一関節の痛みで整形外科を受診し、「ヘバーデン結節ですね」と診断された時、多くの人が「この痛みや変形は治るのだろうか」と不安に思うでしょう。残念ながら、現在の医療では、一度すり減ってしまった軟骨を元に戻したり、変形してしまった骨を完全に修復したりする根本的な治療法は確立されていません。そのため、ヘバーデン結節の治療は、主に「痛みを和らげ、症状の悪化を防ぎ、指の機能をできるだけ維持する」ことを目的とした「保存療法」が中心となります。整形外科で行われる主な保存療法は、以下の通りです。まず、基本となるのが「安静と生活指導」です。指先に負担のかかる作業(瓶の蓋を開ける、重い荷物を持つ、長時間のパソコン作業など)をできるだけ避け、関節を休ませることが痛みの緩和に繋がります。医師や理学療法士から、指に負担をかけないような道具の使い方や、日常生活での工夫についてアドバイスを受けることもあります。次に、「薬物療法」です。痛みが強い場合には、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や、貼り薬、塗り薬などが処方されます。これにより、関節の炎症を抑え、痛みを和らげます。ただし、内服薬の長期使用は胃腸障害などの副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。また、「装具療法(テーピングや固定具)」も有効な手段です。痛む関節をテーピングで固定することで、関節の動きを制限し、外部からの刺激を減らして痛みを軽減させます。特に、仕事や家事でどうしても指を使わなければならない場合に有効です。市販のテーピングでも可能ですが、正しい巻き方について、一度専門家に指導してもらうと良いでしょう。これらの保存療法で痛みが改善しない場合には、「ステロイド注射」が検討されることもあります。炎症を起こしている関節内に、直接ステロイド薬を注射することで、強力に炎症を抑え、痛みを劇的に改善させる効果が期待できます。ただし、繰り返し注射を行うと、腱を傷めるリスクなどもあるため、頻繁には行えません。これらの保存療法を組み合わせても、痛みが全く改善せず、日常生活に大きな支障をきたすような場合には、最終手段として「手術」が選択されることもあります。

  • リウマチ科だけじゃない。線維筋痛症の集学的治療

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    線維筋痛症は、全身の痛みだけでなく、倦怠感、不眠、うつ症状など、非常に多彩な症状を伴う複雑な病気です。そのため、その治療も、単一の診療科や、一つの治療法だけで完結するものではありません。患者さん一人ひとりの症状に合わせて、様々な分野の専門家が連携し、多角的なアプローチで治療を進めていく「集学的治療」という考え方が、非常に重要になります。この集学的治療の中心となり、全体の司令塔の役割を果たすのが、主に「リウマチ科・膠原病内科」です。リウマチ専門医は、まず他の病気でないことを確認して正確な診断を下し、治療の全体像を設計します。そして、痛みをコントロールするための薬物療法の中心を担います。現在、線維筋痛症の治療薬として保険適用されている、神経の過剰な興奮を抑える薬(プレガバリン)や、脳内の痛みを抑える神経伝達物質を増やす薬(デュロキセチン、アミトリプチリンなど)を、患者さんの状態に合わせて処方します。しかし、薬物療法だけでは、この病気を乗り越えることは困難です。そこで、様々な専門家の力が必要になります。まず、頑固な痛みを和らげるために、「ペインクリニック」との連携が有効です。ペインクリニックでは、神経ブロック注射などを用いて、薬物療法とは異なるアプローチで痛みの悪循環を断ち切る手助けをしてくれます。次に、痛みや倦怠感によって低下した身体機能を維持・向上させるための「リハビリテーション科」の役割も重要です。理学療法士や作業療法士が、患者さんの体力に合わせて、無理のない範囲での運動プログラム(ストレッチ、有酸素運動、水中運動など)を指導します。適度な運動は、痛みを軽減させ、体力をつけ、気分を改善する効果があることが分かっています。さらに、痛みと共存していく中で生じる、不安や気分の落ち込み、不眠といった精神的な問題に対しては、「心療内科・精神科」や「臨床心理士」によるサポートが不可欠です。カウンセリングや、痛みに対する認知(考え方)を変えていく認知行動療法などを通じて、心の負担を軽減し、病気と前向きに向き合う力を育んでいきます。このように、リウマチ科をハブとして、様々な専門家がチームを組んで患者さんを支えること。それが、線維筋痛症という難治性の病気に対する、最も効果的な治療戦略なのです。

  • 熱なしの首の痛み。子供の成長と骨格の特性

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    なぜ、子供は大人ではあまり見られない「環軸関節回旋位固定」のような、特有の首のトラブルを起こしやすいのでしょうか。その答えは、子供の成長過程における、骨格や靭帯の解剖学的な特性に隠されています。大人の首の骨(頸椎)は、一つひとつの骨が大きく、関節の噛み合わせも深く、強力な靭帯や筋肉によって、しっかりと安定しています。そのため、よほど大きな外力が加わらない限り、関節がずれたり、脱臼したりすることはありません。一方、子供、特に幼児期から学童期にかけての頸椎は、まだ発達の途上にあります。まず、骨そのものが、まだ軟骨成分を多く含んでおり、大人に比べて柔らかく、変形しやすい状態です。そして、環軸関節(一番目と二番目の頸椎の関節)の関節面は、大人に比べて傾斜が大きく、水平に近い形状をしています。これは、お皿の上にお皿が乗っているようなもので、構造的に滑りやすく、不安定なのです。さらに、この不安定な関節を支える「靭帯」も、大人に比べて非常に緩やかで、伸展性に富んでいます。子供の体が柔らかいのは、この靭帯の柔軟性のおかげでもありますが、それは同時に、関節が必要以上に動いてしまい、ずれやすいという弱点にも繋がります。これらの「骨の形状が未熟」「関節面が水平に近い」「靭帯が緩い」という三つの要素が、子供の頸椎を、大人とは比較にならないほど不安定な状態にしています。だからこそ、大人であれば何でもないような、ソファでうたた寝をする、でんぐり返しをするといった些細なきっかけや、風邪による喉の炎症が波及するだけで、環軸関節のバランスが崩れ、回旋位固定という状態を引き起こしてしまうのです。この子供特有の解剖学的な特徴は、成長と共に徐々に変化していきます。骨が成熟し、靭帯がしっかりしてくる思春期以降になると、環軸関節回旋位固定の発生頻度は、著しく減少します。つまり、この病態は、子供の体がまだ成長段階にあることの、一つの証しとも言えるのです。熱のない突然の首の痛みは、親を心配させますが、それは子供の未熟でデリケートな体の構造が原因で起こる、成長過程の一過性のトラブルであることが多い、ということを理解しておくと、少し冷静に状況を受け止めることができるかもしれません。

  • 危険なめまいのサイン。脳の病気が隠れている可能性

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    ぐるぐる回る回転性めまいの多くは、耳の病気が原因であり、命に別状はありません。しかし、ごく稀に、そのめまいの背後に、脳梗塞や脳出血といった、一刻を争う「脳の病気」が隠れていることがあります。これらの「危険なめまい」を見分けるためのサインを知っておくことは、自分や大切な人の命を守る上で極めて重要です。耳が原因のめまいと、脳が原因のめまいとを区別する最も重要なポイントは、「めまい以外の神経症状を伴っているかどうか」です。脳の中でも、体のバランスを司る「小脳」や「脳幹」といった部分に障害が起こると、めまいが発生します。これらの部位は、体の動きや感覚をコントロールする重要な神経が集まっている場所でもあるため、ここに異常が生じると、めまいと共に、様々な神経症状が同時に現れるのです。以下のサインが一つでも見られた場合は、ただのめまいではない可能性を考え、ためらわずに救急車を呼ぶか、脳神経外科や神経内科のある救急病院を直ちに受診してください。激しい頭痛: 「後頭部をバットで殴られたような」と表現されるような、突然の激しい頭痛を伴うめまいは、くも膜下出血などのサインです。ろれつが回らない・言葉が出にくい: 明らかに話し方がおかしい、思ったように言葉が出てこない。手足のしびれ・麻痺: 片方の手足に力が入らない、感覚が鈍い、しびれる。物が二重に見える(複視): 視点が合わず、物が二つに見える。顔面の麻痺: 顔の半分が歪む、口の片側から水がこぼれる。まっすぐ歩けない: 立とうとしてもバランスが取れず、一方向へ倒れてしまう。これらの症状は、脳の血管が詰まったり、破れたりしていることを示す危険な兆候です。特に、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクがある方は、注意が必要です。これに対して、耳が原因のめまいの場合は、吐き気や嘔吐はあっても、上記のような神経症状を伴うことはありません。難聴や耳鳴りといった「耳の症状」を伴うことはあっても、ろれつが回らなくなったり、手足がしびれたりすることはないのです。めまいの症状を冷静に観察し、これらの危険なサインがないかを確認すること。それが、命を救うための第一歩となります。

  • 突発性発疹と間違いやすい病気。登園前に再確認を

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    高熱の後に発疹が出た場合、その多くは突発性発疹ですが、中には似たような症状を示す、他の注意すべき病気の可能性もゼロではありません。特に、保育園への登園を再開する前には、本当に突発性発疹で間違いないか、他の感染症ではないかという点を、念のため確認しておくことが大切です。突発性発疹と症状が似ていて、鑑別が必要となる代表的な病気に「麻疹(はしか)」があります。麻疹も、高熱と発疹を主症状としますが、その経過は突発性発疹とは大きく異なります。麻疹の場合、高熱と共に、咳、鼻水、目やにといった、風邪のような症状(カタル症状)が強く現れるのが特徴です。そして、熱が一旦少し下がりかけた頃に、口の中に「コプリック斑」という、白い粘膜疹が現れます。その後、再び高熱になると同時に、耳の後ろあたりから発疹が出始め、それが顔、体、手足へと広がっていきます。発疹は、突発性発疹の淡いピンク色のものとは異なり、赤く、次第に融合して大きな斑点状になるのが特徴です。麻疹は非常に感染力が強く、重篤な合併症を引き起こすこともあるため、学校保健安全法で厳格な出席停止期間が定められています。もし、高熱と発疹に加えて、ひどい咳や鼻水、目やにがある場合は、麻疹の可能性も考慮し、必ず医療機関を受診し、診断を確定させる必要があります。また、「風疹(三日ばしか)」も、発熱と発疹を伴いますが、熱は比較的軽度であることが多く、発熱と同時に発疹が現れるのが特徴です。耳の後ろのリンパ節の腫れもよく見られます。その他にも、アデノウイルスやエンテロウイルスなど、様々なウイルスが発熱と発疹を引き起こすことがあります。薬によるアレルギー反応(薬疹)で、発熱と発疹が出ることもあります。これらの病気は、それぞれ感染力や対処法、登園の基準が異なります。最終的な診断は、医師でなければ下せません。「熱が下がった後に発疹が出たから、きっと突発性発疹だろう」と自己判断する前に、一度小児科医の診察を受け、「他の感染症の可能性はなく、集団生活に戻って問題ない」という専門家のお墨付きをもらっておくことが、子供自身にとっても、保育園の他のお友達にとっても、最も安全で安心な選択と言えるでしょう。