お子さんが風邪を引いた際、親御さんにとって最大の懸念は、その症状がいつ肺炎に変わってしまうのかという点でしょう。子供、特に乳幼児の肺炎は進行が非常に速く、朝は元気に遊んでいた子が夕方には入院が必要なほど重症化することも珍しくありません。子供の風邪から肺炎への移行を察知するために、親が最も注意深く観察すべきは、何よりも「呼吸の仕方」です。子供は大人に比べて気道が細く、肺の予備能力も低いため、肺炎になると一気に呼吸が苦しくなります。服をめくって、お子さんの胸やお腹の動きを見てください。息を吸う時に、鎖骨の上が凹んだり、肋骨の間がペコペコと凹んだりする「陥没呼吸」が見られる場合は、肺を総動員して必死に酸素を吸おうとしている非常に危険な状態です。また、鼻の穴がピクピクと動く「鼻翼呼吸」も、重度の呼吸困難を示すサインです。熱の高さだけにとらわれてはいけません。肺炎の中には、マイコプラズマ肺炎のように、高熱よりも「止まらない激しい咳」が特徴のものもあります。夜も眠れないほどの咳が続き、吐き戻してしまうような場合は、肺に負担がかかりすぎている証拠です。次に、お子さんの「表情と活気」を観察してください。目が虚ろである、あやしても笑わない、水分を摂る力がないといった状態は、全身の酸素が不足している緊急サインです。特に、機嫌が悪くて泣き続けているかと思えば、急にぐったりして寝入ってしまうような変化は、体力の限界を示しています。また、呼吸の音にも耳を澄ませてください。「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が聞こえる場合は、喘息性気管支炎や肺炎によって気道が狭くなっています。家庭での対応として最も大切なのは、不安を感じたら「これくらいで受診してもいいのかしら」と迷わず、迷った瞬間に小児科を受診することです。医師に「いつからどんな咳が出ているか」「呼吸が苦しそうに見えるか」を詳しく伝えることが、迅速な診断に繋がります。子供は自分の苦しさを正確に言葉にできません。親がその「静かな変化」を読み取り、風邪から肺炎への分岐点で適切な医療へと繋いであげることが、何よりも大切な親の心得です。早期の点滴や吸入治療は、お子さんの小さな体を肺炎の苦しみから救い出し、健やかな笑顔を取り戻すための、最も愛情に満ちた選択となるはずです。