ヘバーデン結節と診断され、指の変形が進んでいくのを見ると、「この指はもう元には戻らないのだろうか」と、深い悲しみや不安を感じる方は少なくありません。残念ながら、一度変形してしまった関節を、薬やリハビリで完全に元の形に戻すことは、現在の医療では困難です。しかし、ほとんどのヘバーデン結節は、痛みのピークを過ぎれば、変形は残るものの、痛みなく日常生活を送ることができるようになります。そのため、治療の主目的は、変形を治すことではなく、痛みをコントロールし、指の機能を維持することに置かれます。しかし、ごく一部のケースでは、様々な保存療法を試しても、頑固な痛みが続いたり、変形が高度に進んで指の機能が著しく損なわれたりして、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。そのような場合に、最終的な選択肢として検討されるのが「手術療法」です。ヘバーデン結節に対する手術には、主に二つの方法があります。一つは「関節固定術」です。これは、変形して痛みの原因となっている第一関節(DIP関節)の軟骨を取り除き、上下の骨を金属のスクリューやピンなどで固定して、一つの骨として癒合させてしまう方法です。関節を固定するため、その関節は永久に曲がらなくなりますが、痛みの原因である関節の動きそのものがなくなるため、除痛効果は非常に高く、確実です。指が曲がらなくなるというデメリットはありますが、痛みがなくなり、指に力が入れやすくなることで、かえって生活の質が向上する方も多くいます。もう一つの方法は「関節形成術(人工関節置換術)」です。これは、傷んだ関節を、金属やプラスチックでできた小さな人工関節に置き換える手術です。関節の動き(可動性)を温存できるという大きなメリットがありますが、人工関節の耐久性の問題や、脱臼、緩みなどのリスクも伴います。また、行える医療機関も限られています。手術に踏み切るかどうかは、非常に慎重な判断が必要です。年齢、活動性、どの指か、そして何よりも患者さん自身が「痛みなく生活したい」のか、「指の動きを保ちたい」のか、何を最も優先するかによって、選択は変わってきます。手術は、あくまで最後の手段ですが、つらい症状に悩む患者さんにとって、希望の光となる可能性を秘めた選択肢であることも事実です。