浮腫が悪化していく過程で、私たちが最も直面しやすい危険は、皮膚のトラブルとそれに伴う深刻な感染症です。水分が溜まってパンパンに膨らんだ皮膚は、いわば限界まで膨らんだ風船のような状態にあります。皮膚の組織が引き伸ばされることで、細胞同士の結びつきが弱まり、外部からの細菌やウイルスに対するバリア機能が著しく低下します。この状態が続くと、皮膚の表面から組織液が染み出してくる「滲出」という現象が起き、常に湿った状態になります。ここが細菌にとっての格好の繁殖場となり、蜂窩織炎という恐ろしい感染症を引き起こすことになります。蜂窩織炎は、皮膚の深い層に細菌が入り込んで広範囲に炎症を起こす病気で、患部が真っ赤に腫れ上がり、火を押し当てられたような激痛と高熱を伴います。浮腫が悪化している人は免疫力も低下していることが多いため、この感染症が急速に進行し、細菌が血液に乗って全身に回る敗血症へと進展するリスクが非常に高いのです。さらに、慢性的な浮腫は皮膚の代謝を阻害するため、皮膚が次第に硬くなる硬化という現象も引き起こします。これを放置すると、皮膚の弾力性が失われてひび割れが生じ、そこから再び感染を繰り返すという悪循環に陥ります。また、静脈の血流が滞ることで、皮膚に必要な酸素や栄養が届かなくなり、うっ血性皮膚炎と呼ばれる茶褐色の色素沈着が生じます。これが進行すると、わずかな刺激で皮膚が崩れ落ちる皮膚潰瘍となり、一度できてしまうと数ヶ月から年単位の治療期間が必要になることも珍しくありません。浮腫が悪化するということは、私たちの体を守る最大の鎧である皮膚が、自らの重みと圧力によって崩壊していくプロセスなのです。足を清潔に保つことや保湿を行うことは大切ですが、根本にある浮腫そのものをコントロールしなければ、これらの皮膚トラブルを防ぐことはできません。むくみがひどくなり、皮膚に痒みや赤み、あるいは今までになかった色の変化が見られたときは、感染症が本格化する前の最終警告だと捉えてください。早期に圧迫療法や薬物療法を開始することが、皮膚の崩壊を食い止め、全身の安全を守るための鍵となります。
浮腫の悪化がもたらす皮膚の脆弱化と感染症の恐ろしい連鎖