体中の至る所が、原因もわからず激しく痛む。まるでインフルエンザにかかった時のように、全身に広がる鈍い痛みや、針で刺されるような鋭い痛みが、毎日、朝から晩まで続く。その上、耐え難い倦怠感や不眠、頭痛、気分の落ち込みといった、多種多様な症状にも悩まされる。このような状態が続いているなら、それは「線維筋痛症」という病気かもしれません。しかし、この複雑で理解されにくい病気、いざ病院へ行こうにも「一体、何科を受診すればいいのか」と、途方に暮れてしまう方が非常に多いのが実情です。結論から言うと、線維筋痛症の診断と治療を専門的に行っている中心的な診療科は「リウマチ科」あるいは「膠原病内科」です。線維筋痛症は、関節リウマチのように関節の変形や破壊が起こる病気ではありませんが、全身に痛みが広がるという点で共通点があり、また、関節リウマチやシェーグレン症候群といった膠原病に合併することも多いため、リウマチ・膠原病の専門医が診療にあたることが最も多いのです。リウマチ専門医は、全身の痛みを訴える患者さんを診察する中で、他の様々な病気(関節リウマチ、多発性筋炎、甲状腺機能低下症など)の可能性を、血液検査や画像検査などを用いて一つひとつ除外していく「除外診断」というプロセスに長けています。線維筋痛症には、診断を確定させる特異的な検査が存在しないため、この除外診断が極めて重要になるのです。また、近年、線維筋痛症の治療薬として保険適用が認められた薬剤(プレガバリンなど)の処方や、痛みのコントロールに関する専門的な知識も持っています。しかし、現状では、すべてのリウマチ科医が線維筋痛症の診療に精通しているわけではない、という課題もあります。そのため、受診する際には、病院のウェブサイトなどで「線維筋痛症の専門外来」を設けているか、あるいは医師の専門分野として「線維筋痛症」が明記されているかを確認することが、より良い医療に繋がるための重要なポイントとなります。その他、痛みの治療を専門とする「ペインクリニック」や、心の側面からのアプローチを行う「心療内科・精神科」も、治療において重要な役割を担うことがあります。まずは、リウマチ科・膠原病内科を最初の扉として、そこから必要な専門科と連携していくのが、この複雑な病気と向き合うための最も現実的な道筋と言えるでしょう。
線維筋痛症を疑ったら、まず行くべき診療科は?