かつての私は、夏が来るのが恐怖で仕方ありませんでした。その理由は、三十五度を超える猛暑そのものではなく、決まって襲ってくる原因不明の腹痛と下痢にありました。毎年七月を過ぎる頃から、私の胃腸はまるで活動を放棄したかのように重苦しくなり、食後には必ずと言っていいほど差し込むような痛みに襲われていたのです。当時は「夏バテだから仕方がない」と諦めていましたが、その実態は自ら招いた冷えの連鎖でした。当時の私は、外回りの営業から戻るたびに、冷え切ったペットボトルの水を一気に飲み干すのが習慣でした。オフィスの設定温度は常に二十三度。その極寒の環境で、冷たい水を胃に流し込み、薄着でデスクワークに励んでいたのです。夜になれば「暑くて寝られないから」と冷房をつけたまま、お腹に何もかけずに眠る日もありました。ある朝、激しい腹痛で目が覚め、ついに立ち上がることもできなくなったとき、私はようやく自分の身体をいじめ抜いていた事実に気づかされました。病院へ行くと、医師から「典型的な内臓の冷えによる夏バテ腹痛」だと診断されました。そこから私の生活改善が始まりました。まず取り組んだのは、飲み物をすべて「常温」か「温かいもの」に変えることでした。最初は物足りなさを感じましたが、数日続けると、食後の胃の重みが不思議と和らいでいくのを実感しました。次に導入したのが、真夏の腹巻です。絹素材の薄手のものを選べば、スーツの下でも蒸れることなく、常に腹部を一定の温度に保つことができました。冷房の風が直接当たらないだけで、腸が落ち着いていくのが分かりました。さらに、食事の内容も大きく変えました。それまでは冷やし中華やそうめんばかりでしたが、夏こそ具だくさんの味噌汁や、生姜を効かせた温かい料理を意識して摂るようにしました。生姜は天然のヒーターのような役割を果たし、私の冷え切った内臓に活力を与えてくれたのです。また、湯船に浸かる習慣も復活させました。夏場はシャワーだけで済ませがちですが、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで、乱れていた自律神経が整い、夜の眠りの質も劇的に向上しました。驚いたことに、これらの「温活」を始めてから一ヶ月後、あれほどしつこかった腹痛が一度も起きなくなったのです。夏バテの腹痛は、身体が「これ以上冷やさないでくれ」と上げている悲鳴でした。それに気づかずに薬だけで抑えようとしていたことが、いかに無意味であったかを痛感しました。今では、夏場でも鞄の中に常にストールや温かい飲み物を忍ばせています。環境を整え、内側から労わってあげることで、私の胃腸はかつてないほどの平穏を取り戻しました。夏バテの腹痛に悩んでいる方がいれば、まずはその冷たい一杯を置くことから始めてみてください。あなたの身体は、あなたが思う以上に温かさを求めているのです。
私の夏を台無しにした冷えと腹痛のループから抜け出した経験