人生の転機となる転職活動において、意外な落とし穴となるのが社会保険の空白期間です。前の会社を退職してから次の会社に入社するまでの数日間、あるいは数週間の間、手元に保険証がない状態が発生し、そのタイミングで運悪く病院にかからなければならないケースがあります。多くの人が「数日くらいなら大丈夫だろう」と考えがちですが、日本の医療制度において無保険期間は一秒たりとも許容されていません。退職日の翌日から、あなたは前の会社の保険資格を失います。この期間に病院へ行くと、全額自己負担を求められることになります。転職先が決まっていても、新しい保険証が発行されるまでには通常一週間から二週間、場合によってはそれ以上の時間がかかります。この「保険証がない期間」を安全に乗り切るためには、主に三つの選択肢があります。一つ目は、前の会社の保険を任意継続することです。退職後二十日以内に手続きが必要ですが、最長二年間、これまでの保険を継続できます。二つ目は、お住まいの市区町村で国民健康保険に加入すること。退職証明書などを持参すれば即日で加入手続きができ、その場で「健康保険被保険者資格証明書」という、保険証の代わりになる書類を発行してもらえることがあります。三つ目は、家族の扶養に入ることですが、これにも収入制限等の条件があります。もし、これらの手続きが間に合わず、保険証がない状態で受診してしまった場合は、必ず領収書を保管しておいてください。新しい保険証が届いた後に、以前の保険あるいは新しい保険の窓口へ「療養費支給申請書」を提出することで、払いすぎた七割分の還付を受けることが可能です。ただし、ここで注意すべきは「有効期限」です。受診した日にどの保険の資格があったかによって、還付を請求する先が変わります。退職後で国民健康保険に加入する前の受診であれば、基本的には後に加入する国民健康保険に請求することになります。この手続きを忘れてしまうと、数万円の損失が確定してしまうため、転職時のバタバタの中でも領収書の管理だけは徹底すべきです。また、入社直後で保険証がまだ届いていないが受診が必要な場合は、勤務先の健康保険担当者に「健康保険被保険者資格取得確認書」の発行を依頼してください。これがあれば、保険証の実物がなくても病院の窓口で三割負担が適用されます。転職は精神的にも肉体的にもストレスがかかり、体調を崩しやすい時期です。保険証がないからと受診を控えて病状を悪化させるのが最悪のシナリオです。制度を正しく使い、空白期間を作らない、あるいは空白期間の対処法を知っておくことが、スマートな社会人としてのリスクマネジメントと言えるでしょう。
転職期間中で保険証がない時の医療費と手続きの注意点