浮腫の悪化と腎臓の機能は、鶏と卵の関係のように密接に絡み合っています。腎臓は体内の余分な水分や塩分、そして老廃物を濾過して尿として排出する浄化工場ですが、この工場が何らかの理由でダメージを受けると、真っ先に現れるのが浮腫です。特にネフローゼ症候群や慢性腎臓病が進行すると、血液中のタンパク質であるアルブミンが尿へと大量に漏れ出してしまいます。アルブミンには、血管の中に水分を留めておく「浸透圧」を保つ重要な役割があるため、これが不足すると血管内の水分が維持できなくなり、洪水のように細胞の間へと流れ出します。こうして浮腫が悪化すると、今度は血管の中の有効な血液量が減ってしまい、腎臓への血流がさらに低下します。血流が落ちた腎臓は「水分が足りない」と勘違いし、さらに水分や塩分を溜め込むホルモンを放出し、浮腫をさらに増大させるという絶望的な負のスパイラルが形成されます。このスパイラルを放置すると、浮腫は足だけでなく、顔のまぶたや手、さらにはお腹の中に水が溜まる腹水へと進行します。腹水が悪化すると内臓が圧迫され、食欲不振や便秘、呼吸のしづらさを引き起こします。最終的に腎機能が完全に停止する腎不全に至ると、自力で尿を作ることができなくなり、体内のカリウム濃度が異常上昇して心停止を招くなど、全身の代謝バランスが完全に崩壊します。浮腫が悪化するということは、あなたの体の中の浄化システムが機能不全に陥り、毒素が全身に回っている状態を示しているのです。すねの凹みが戻らないという単純な現象の裏側で、腎臓は悲鳴を上げ、必死に現状を維持しようともがいています。尿の量が減った、尿が異常に泡立つ、あるいは血圧が急激に上がったといった症状が浮腫と共に現れたなら、それは腎臓からの最終通告だと捉えるべきです。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり悪化するまで痛みを出しませんが、浮腫という目に見える形での訴えには非常に正直です。早期に診断を受け、食事療法や薬物療法で腎臓を休ませてあげなければ、一生を左右するような重大な不自由を抱えることになります。浮腫を侮ることは、自らの内なる浄化装置を破壊することと同義なのです。